注目されたアメリカの雇用統計ですが、残念ながら思ってたよりも雇用が強いという結果がでました。
「残念ながら」と言ったのは、少なくない投資家は雇用が弱まってインフレが抑制されれば、待望の利下げが2024年3月にあるだろうと期待していたからです。
しかし、今回雇用統計が予想よりも強かったことで、3月の利下げが遠のきました。
この記事のポイント
- 11月の雇用時計は予想された以上に強かった。
- 24年3月にも利下げがあると期待していた投資家は、今回の雇用統計を受けて利下げが遠のいたと判断した。利下げ予想を5月に繰り下げた。
- 失業率が低下したことの意味は大きい。今回の雇用統計の結果によってはアメリカの景気後退入り判断も出ていたはずだが、景気後退は遠のいた。
強かった11月のアメリカ雇用統計
11月の雇用統計は、主要な項目ですべて予想を上回る結果となりました。
- 非農業部門雇用者数:19.9万人(予想18.3万人)
- 失業率:3.7%(予想3.9%)
- 平均時給(前月比):0.4%(予想0.3%)
事前から言われていましたが、ストライキが終わって職場に戻ってきた人が多かったようです。
製造業の従業員は11月に28,000人増加しました。自動車や部品関連の30,000人ほどの従業員がストライキから戻ってきたことを反映しています。(BLS)
もしもストライキからの復職がなければ、製造業の雇用者数はわずかに減少していたと思われます。
今のアメリカではインフレを抑えるために雇用の伸びが小さいほうが望ましかったのですが、そうはなりませんでした。
また、平均時給が前月よりも大きく上がっているのも良い傾向ではありませんでした。
利下げ予想は24年5月に繰り下げ
一時的なストライキの話ばかりしていても仕方ないので、アメリカの雇用者数の傾向を見ていきましょう。
ストライキの影響でこの数ヶ月は多少数字がゆがんだかもしれませんが、それでも全体的には雇用増加は縮小傾向が続いているようです。
ただ、問題は雇用が弱まるペースです。
市場の投資家は雇用が十分弱まれば(≒インフレが弱まれば)、2024年3月にも利下げがあるだろうと考えていましたが、残念ながら今月の雇用統計では3月の利下げは無理だと判断したようです。
市場の利下げ予想は3月から5月に後退しています。
アメリカの景気後退も遠のいた
また、今回の雇用統計でアメリカの景気後退入りも遠のいたと思われます。
景気後退したと判断する基準の一つにサームルールというものがあります。もしも11月の失業率が4.0%を記録していたらアメリカは、サームルール上では景気後退に入っていたという重要な月でした。
サーム・ルールによる景気後退期の判定
- 過去3ヶ月間の失業率の平均値が、過去12ヶ月間の失業率の最低値よりも0.5%ポイント上昇していたら、景気後退期と判断する。
しかし、結果は失業率4.0%どころか3.7%にまで低下していたので、アメリカの景気後退入りは遠のきました。
これで2023年内のアメリカの景気後退は次回12月失業率が4.1%を超えないといけなくなったので、2023年内の景気後退はほぼなくなりました。
一時的ではない失業者はいつもの景気後退前のように増加傾向にあるので、今回もアメリカは景気後退になると思いますが、景気後退に入るまでにはまだまだ時間がかかりそうです。