投資家の注目を集めた5月のアメリカの雇用統計の結果が発表になりました。
この結果は強弱が入り乱れているので、どう見たらいいのか正直かなり悩むのですが、市場の投資家は今回強い結果が出た項目よりも弱い結果のほうに注目しているような印象があります。
この記事のポイント
- 5月のアメリカの雇用統計の結果はまちまちだった。
- 非農業部門の雇用者数は予想を超えて大きく伸びたが、失業率は大きく悪化して、賃金の伸びもさほど大きくなかった。
- ただし、「6月に利上げが行われる」と考える市場の投資家は多くない。つまり、それほど利上げを焦らなくて良い内容だった模様。
強い数字と弱い数字が見られた雇用統計
5月のアメリカの雇用統計は雇用の強弱がどちらも表れている数字になりました。
まず、一番目につく雇用者数の増加は、予想を大幅に上回りました。
非農業部門雇用者数の変化(企業調査)
- 予想:+19.0万人
- 結果:+33.9万人
- 前回:25.3万人から29.4万人に上方修正
これだけ見ると、文句なしに「アメリカの景気は強い」ということになると思います。
ただ、同時に発表された失業率は1ヶ月で0.3%も増えています。つまり、4月から5月にかけて失業者が増えたと言っているように聞こえます。
失業率(家計調査)
- 予想:3.5%
- 結果:3.7%
- 前回:3.4%
また、非農業部門の雇用数は予想を大きく超えて増えているのですが、だからといって賃金が伸びているわけではないようです。
5月の平均時給の伸びは予想を下回っている上に、前回(4月)の平均時給も下方修正されています。
平均時給(家計調査)
- 予想:前月比+0.4%
- 結果:前月比+0.3%
- 前回:前月比+0.5%から+0.4%に下方修正
まとめると、非農業部門の雇用数は予想の倍近くの伸びを示して一見すると雇用は強かったように見えるのですが、失業者は増え、賃金の伸びもいまいちで雇用の弱さも顔をのぞかせました。
雇用統計の読み方
今回の雇用統計をどう解釈したら良いのでしょうか。
少し細かい話のなのですが、実は雇用統計の中では、「企業調査」と「家計調査」の2つの調査を行っています。そして5月の雇用統計を見てみると、企業調査では強い結果が、家計調査では弱い結果がでているように見えます。
- 企業調査:非農業部門の雇用者数など、予想よりも強い結果が並んだ。
- 家計調査:失業率や平均時給など弱い結果が並ぶ
ここからは私の勝手な想像になりますが、企業調査と家計調査の両方の結果が正しいということはない気がしています。どちらか一方が正しく、どちらか一方が間違っている(誤差が大きい結果)ように見えます。
もしも企業調査(非農業部門の雇用者数など)のほうが正しいなら、次のことが言えます。
- 非農業雇用者数は予想よりもはるかに強い。アメリカのインフレはまだ強いだけでなく、景気後退もまだまだ先になりそう。
一方で、家計調査(失業率や平均時給など)のほうが正しいなら、次のことがわかります。
- 失業者は増加しており景気後退は近づいている。平均賃金の伸びも緩やかながら鈍化しており、インフレは沈静化に向かっている。
このどちらが正しいかはまだ私にはわかりません。しかし、金利先物市場の投資家は家計調査(失業率や平均時給など)のほうが正しいと思っているのかもしれません。
非農業部門雇用者数があれだけ強かったのにもかからわず、市場の大半は「6月のFOMCでアメリカは利上げをしない」と予想しているようです。
金利先物市場の投資家は今回の雇用統計を見ても、「6月に利上げを焦ってやる必要はない」と考えているように見えます。