5月5日のアメリカ雇用統計では、4月の雇用が予想以上に強いことがわかりました。
それならインフレを警戒して米国株は下落したかと思いきや、そういう展開にはなっていません。
どういう理屈でこの日の株価が上がったのかを、書いていきたいと思います。
結論を先に書くと、4月のアメリカの雇用は強かったもののインフレ再燃や利上げを心配するようなレベルではなく、またリセッションもまだ迫っていないことが確認できて株が買われたように見えます。
この記事のポイント
- 4月の雇用統計は一見するとかなり雇用が強いことを示す結果になった。
- 4月は力強い結果になったが、2月や3月のデータは下方修正された。雇用が緩やかに弱まっている傾向はまだ続いている。
- インフレは抑えられているトレンドは続いていおり、リセッションまではまだ時間があることがわかって米国株は上昇した。
予想外に強かった4月の雇用
まず、4月のアメリカの雇用統計の数字を確認していきます。
- 非農業部門雇用者数:+25.3万人(予想17.9万人)
- 失業率:3.4%(予想3.6%)
- 平均時給:4.4%(予想4.3%)
雇用統計では主に上の3つの数字が注目されるのですが、どの数字を見ても予想以上に雇用が強いことを示すデータになっていることです。
雇用者は予想以上に増え、失業率は予想外の低下を示し、時給も予想以上に上がっています。
「これだけ雇用が強いなら、アメリカのインフレは再燃するのか」、「インフレのための金融引き締めがまだ続くなら、株価は下がるのかな」と思った投資家もいたはずですが、そうはなりませんでした。
雇用統計の日の米国株は大きく上昇して終わっています。
これは一体どういう理屈なのでしょうか。
投資家たちの雇用統計の見方
後付けにはなりますが、なぜ株価が上昇を考えることで投資家が今回の雇用統計をどのように捉えたかをある程度は推測できます。
恐らくなのですが、投資家の判断は「(1)インフレ鈍化の傾向はまだ続く」と同時に「(2)アメリカのリセッションまではまだ少しだけ時間がかかる」という2つを考えて、株価が上がったように思います。
インフレはまだ鈍化傾向が続く
上の結果で見たように確かに、4月のデータだけ見るとアメリカの雇用は強かったです。
しかし、前回分の下方修正されたこともあって、未だにアメリカは雇用が弱まる傾向は続いているように見えます。
つまり、前回分の下方修正まで考慮に入れると、4月のアメリカの雇用は強かったものの去年から続いている雇用が弱まるトレンドを脱却するほど強くないと投資家は判断したようです。
それなら、インフレを抑えるための利上げも心配する必要もないと考えたようです。
リセッションまでは時間がかかる
以前、このブログでは過去12ヶ月の最低失業率の数字から安定して0.5%ほど失業率が上昇したら、リセッションになると判断できるというサームルールと呼ばれる基準を紹介しました。
このサームルールに照らし合わせると失業率が3.9%を超えると今のアメリカはリセッションになるはずなのですが、3.9%へと上昇するどころか3.4%へと低下したことで、アメリカのリセッションはまだ近くないことが明らかになりました。
以上のことから、インフレはまだ鈍化傾向が続いていて株価に悪影響な利上げの心配はまだ必要なく、リセッションまでも少し時間があると考えた投資家が株を買いにいったように思います。
今回はリセッションを待っている私のような投資家には少し悲しい結果になりました。
ただ、リセッションまでの時間が間延びしただけで、アメリカが景気の低迷に向かっていることは確かだと思うので、リセッションにそなえた投資をじっと続けるのみです。