11月の雇用統計が発表されました。
11月の雇用は予想よりも強かったです。ただし、「どこからどう見ても雇用が強い」というわけでもないようです。
この記事のポイント
- 11月の雇用統計は予想以上の強さを見せた。非農業部門雇用者数は予想を超える伸びを見せ、平均時給は予想の倍のペースで伸びた。
- しかし、企業に雇用されている人口は減少している。雇用人口の低下は景気後退前に見られる現象。
強かった雇用統計
11月の雇用統計で発表された主な数字を見ていきます。
- 非農業部門雇用者数:予想20.2万人、結果26.3万人
- 失業率:予想3.7%、結果3.7%
- 平均時給:予想前月比+0.3%、結果+0.6%
非農業部門の雇用者数は前月よりも大きく上回る+26万人で、11月はレイオフが増大したはずなのに失業率は変わらず3.7%と、まだまだアメリカの雇用が強いことを印象づける内容でした。
それに何より印象的なのは平均時給の増加です。前月比+0.6%(年率+6.8%ペース)はとても高い数字を記録しています。
これらの数字を見たときには、「予想以上に雇用が強かったから、インフレ対策のために政策金利は高くなるかもしれない。株も国債はこの日は売られそうだな」と頭をよぎりました。
たしかに、雇用統計発表直後の市場は米国株も米国債も大きく売られる動きを見せました。ただ、次第に持ち直してS&P500は微減にとどまっています。
市場は結果だけ見せて原因を教えてくれないので、どうして落ち着きを取り戻したのかはハッキリしませんが、ひとまず11月の雇用統計を消化したようです。
ここから先は、11月の雇用統計からわかることをもう少しだけ掘り下げていきます。
年内の景気後退はなし
最近はこのブログでもアメリカの景気後退を取り上げる機会が増えました。そして、数ヶ月以内に景気後退が起こっても不思議はないと言っているのですが、今回の結果を受けると「2022年内の景気後退はなさそう」という結論になりそうです。
単純に予想以上に雇用が強かったというのもありますが、景気後退に突入するときには過去12ヶ月に記録した失業率から+0.5%上昇しているという過去の経験則(サーム・ルール)を満たさないからです。
上のグラフで見るように、直近1年間の最低失業率は3.5%ですが、現時点では3.7%にまでしか上昇していません。この程度の微増の失業率増加では景気後退にはまだ入っていないと言えます。
また、12月に失業者が増えたとしても、アメリカで失業率がたった1ヶ月で3.7%から4%を超えることは恐らくないと思われます。
景気後退の兆候はかすかに見られる
ただ、今回の雇用統計が完全に強気一辺倒だったかというと、実はそうでもありません。わずかですが景気後退が近づいている兆候は今回のデータからも見られます。
次のグラフは労働力人口に対する雇用者の人口(*)の割合を示したものですが、下落に転じています。
(*家計調査により算出した「雇用人口(Employed Civilian labor force)」。事業所調査で判明する「非農業部門雇用者数(NFP)」とは違う数字で、1人が複数の企業から雇われていても1人とカウントします。)
この数字は過去の景気後退前にはかならず減少に転じていました。
雇用人口÷労働力人口のピーク | リセッション開始 | 差 |
---|---|---|
2020年2月 | 2020年2月 | 0ヶ月前 |
2006年12月 | 2007年12月 | 12ヶ月前 |
2000年4月 | 2004年3月 | 11ヶ月前 |
1990年3月 | 1990年7月 | 4ヶ月前 |
1981年4月 | 1981年7月 | 3ヶ月前 |
1979年12月 | 1980年1月 | 1ヶ月前 |
今回も同じ傾向が見られるなら、数ヶ月から長くても1年以内に景気後退が訪れると思われます。
また、先日の記事で半年間で雇用人口が減少に転じると景気後退が近いという話をしましたが、今月の結果を受けて直近6ヶ月の雇用されてる人口の伸びは限りなくゼロに近づいていることがわかりました。
このペースな2023年のどこかで(おそらく前半で)雇用人口の伸びはマイナスを記録すると思われます。2023年の景気後退はやはり警戒したいと思います。
以上をまとめると、11月のアメリカの雇用は一見するとまだかなり強いと言えますが、多少なりとも景気後退が近づいてる様子も見られたと感じられた雇用統計になりました。