アメリカの8月の雇用統計が発表されましたが、私は今回の結果は悪くなかったと思っています。
今までのアメリカは人手不足で賃金上昇が高止まりしていて、これが長期化すればインフレも長引く恐れがありましたが、人手不足には改善の傾向が見られました。
この雇用統計で2022年の金融引き締めが大きく変わることはなさそうですが、長期的なインフレを抑える希望がわずかにちらつく内容でした。
この記事のポイント
- (非農業部門の)雇用者数は予想を超えて上回った。失業率は悪化したが、まだ低水準で2022年の金融引き締めはまだ続く。
- 失業率は悪化したのはコロナで働かなくなった労働者が戻りつつあるため。人手不足に悩んでいたアメリカには良い傾向。
- 人手不足が解消されれば、賃金上昇率の高止まりも落ち着く。インフレの長期化の心配はやや和らいで、国債も買われた。
8月の雇用統計
8月の雇用統計の数字を確認していきます。
- 非農業部門の雇用者数:+31.5万人(予想:+30万人)
- 失業率:3.7%(予想:3.5%)
- 平均時給:前月比+0.3%(予想:+0.4%)
まず、一番注目を集めやすい雇用者数は、予想を超えて大きな伸びを示した一方で、今月は失業率が上昇しました。
失業率は前月まで歴史的に低い水準にあったのですが、今回はわずかに上昇に転じています。
「雇用者数は増えているのに、失業率が増えているのはなんで?」と思れるかも知れませんが、これは労働参加率が増えたためです。
2020年に新型コロナウイルスが流行してから仕事に復帰しない人々が一定数いましたが、最近はこうした人々が労働市場に戻ってきているようです。
賃金上昇は緩やかだった
また、今回の雇用統計だけでの一時的な動きかも知れませんが、賃金上昇が緩やかだったのは好印象でした。
上のグラフは、前月からの平均時給の伸びを年率(1年間同じ伸びが続いた場合の成長率)で表したものですが、賃金の伸びは2月以来の低い伸びにとどまりました。
賃金の高い伸びが続く場合には、金融引き締めが長引いて国債も株も売られる心配がありましたが、これは回避できました。
雇用統計の日の国債は全面的に買われて、どの年限も利回りが低下しました。
雇用統計からわかること
8月の雇用状況がわかったところで、ここから考えられることを書いていきます。
- アメリカの人手不足はわずかに解消に向かい出したかも知れない。インフレの長期化の懸念がわずかに後退した。
- 失業率は上がったが、まだ低水準で雇用は強い。金融引き締めは続く。
まず良かった点として、今回の雇用統計を見ているとアメリカの人手不足(賃金上昇の高止まり)がわずかに解消に向かいつつあるかもしれないと希望が持てる内容でした。
労働参加率が上がって人々が労働に復帰している他、失業率も上昇しています。
通常なら失業率の増加は良くないことですが、今のアメリカは失業率よりも求人率のほうが高い人手不足で賃金伸びが高く、このままではインフレが長期化しかねない懸念がありました。
人手不足による賃金の上昇が収まってくれば、アメリカのインフレも長期化せずに済み、株に悪影響がでる金融引き締めの終わりが少し早く訪れるかも知れないという希望が持てます。
これは中長期的に株価にはプラス材料です。
長期的なインフレを抑える希望は持てましたが、しかし、足元を見れば今はまだアメリカは「高いインフレ」と「引く失業率」が居座っています。
なので、今月や年内はまだ金融引き締めがあることには変わりなさそうです。私は短期的にはまだ米国株に弱気なままです。