多くの投資家から注目をされていた、アメリカの2021年8月の雇用のデータが発表されました。
既に結果を知っている人も多いと思いますが、結果は予想以上に悪かったです。
もしも今回の発表された雇用のデータがかなり良かったなら、FRBの債権購入や金利引き上げ予想が早まって、株価に悪影響が見られる可能性も恐れがありましたが、その恐れは一旦遠のいたと思います。
これは短期的には投資家にはプラスに働く気がしています。また今回の雇用統計を受けて、特に何か大きく投資を変える必要もないと思います。
ただし、長期的な問題に目を向けると、今月もまた平均時給が予想を大きく超えるなど、インフレのリスクがわずかに高まっているのを感じます。
この記事のポイント
- 2021年8月のアメリカの雇用の伸びは予想よりもずっと低調だった。ただし、そんな中でも平均時給は予想の倍も伸びた。
- 雇用者数の伸びを見ている限り、テーパリングの早期実現の可能性がかなり低くなった。
- しかし、平均時給は予想の倍以上の伸びを示している。2021年はほとんどの月で平均時給で超えている。このまま賃金上昇が続けば、どこかで引き締めなければならない。
予想よりも大きく伸び悩んだ雇用者の増加数
2021年8月の雇用統計で一番の良くないサプライズは、雇用の伸びの大幅な鈍化が見られたことです。
予想では1か月で+75万人の増加が見込まれていましたが、わずか+25万人にとどまりました。
- 非農業部門雇用者数:+23.5万人(予想+75万人。前回:103.5万人)
- 失業率:5.2%(予想5.2%。前回5.4%)
- 平均時給:前月比+0.6%(予想+0.3%。前回0.4%)
上の結果で気になったのは、「雇用者数の伸びが予想を大きく下回っていること」と「平均時給が予想の倍も伸びていること」です。
コロナの感染拡大で雇用が伸びず
低迷の原因は、8月の新型コロナウイルスの再流行したためと言われています。
米政府の詳細なデータを確認すると、レジャーなどの雇用の伸びが完全に止まり(前月比+0万人)で、感染再拡大の爪痕を確認できます。
興味深いのは、新型コロナウイルスが流行した時期には、毎回はっきりと雇用が減少していることです。
アメリカの感染拡大は2021年8月と、その前には2020年12月から翌1月にかけて見られました。
この感染拡大期には、いずれも雇用者数の伸びが大きく鈍化する傾向が見られています。
新型コロナウイルスの感染拡大は波のように周期的にやってきているので、その度に雇用が影響を受けるなら、これからも数ヶ月に一度の頻度で雇用の浮き沈みを繰り返しながら景気が回復するのかもしれません。
また、コロナの感染拡大は数カ月間で一度勢力が衰えるので、今回は雇用の伸びが鈍化しても一時的かもしれず、また数カ月後には回復している可能性もあります。
気になる平均時給の高い伸び
雇用の鈍化には多くの注目が集まりましたが、私は少し気になっているのは平均時給の伸びです。
今回は前月比+0.6%(年率約7%)とかなりのペースで上昇を続けています。
時給は一度引き上げるとなかなか簡単には下がらないので、長期的なインフレ要因になると言われています。
これはFRBのパウエル議長が「インフレは一過性のもの」と言っていることと食い違います。インフレの中にはたしか一時的に上昇したもの(中古車や航空券など)もありますが、長期的なインフレ要因が依然として衰えていない点はあまり宜しくない状況だとも思います。
今はまだそれほど問題視されていませんが、この傾向が続けばどこかで引き締めざるを得なくなるはずなので、少し警戒しています。
悪かった今回の雇用統計は短期的には投資家にはプラスか
さて、アメリカの経済にとって悪い材料が見られた今回の雇用統計ですが、投資家にとってみれば結果が悪くて好都合だったかもしれません。
以前、このブログでは雇用統計が強ければ、最速で10月にも金融緩和の1つの債権購入の縮小に動くかもしれないと書きましたが、その可能性がかなり低くなりました。投資家には一定の安心材料になると思われます。
参考記事:
>>テーパリングの開始時期の「年内」は、年末なのかできるだけ早期なのか。
8月はたしかに雇用の伸びが低調でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大が主な原因なら、その影響は一時的なはずです。
なので、米国株に投資できるはずという私の考えはまだ変わっていません。
ただし、平均時給でも触れたように長期的に見ると米国はインフレのリスクが上がっていたり、過剰な金融緩和が続いていたりと不安材料も見られるので、今後もかなり注意しながらの投資になりそうです。