もはやそんなに気にしなくていいかも知れないのですが、投資家から注目度の高いアメリカの雇用統計の3月のデータが発表されたので、さらっと振り返っておきます。
この記事のポイント
- 3月の雇用はおおむね予想通りだった。雇用者数の伸びは予想より下回ったが、失業率は低下した。
- 個人的に気になったのは平均時給の伸びがやや高いこと。コロナ以前は3%程度だったが、5%で安定的に推移している。
- 賃金の伸びが加速している背景には、人手不足が見られる。問題はこれがすぐには解消しなさそうなことで、しばらく高いインフレ率が続くように見える。
特にサプライズがなかったアメリカの雇用
3月のアメリカの雇用ですが、だいたい予想通りの内容だったと思います。
- 非農業部門雇用者数:+43.1万人(予想+49万人)
- 失業率:3.6%(予想3.7%)
- 平均賃金:5.6%(予想5.5%)
雇用者数の増加は予想を下回っていますが、それほど気になるレベルではありませんでした。失業率は既に低い状態になっていましたが「さらに低下したかな」という印象です。
正直うと、最近は少し雇用統計の数字に興味を失っています。
過去数年を振り返ると、「不況時の失業率がピークをつけたら、株に投資して良いはず(詳細はこちらの記事)」とか「失業率が◯%まで低下すれば、政策金利の引き上げをそろそろ意識しなければ」などの見どころになるポイントがあったのですが、今や雇用統計で気になる点はそれほど多くありません。
人手不足が起こしている賃金上昇
今回の雇用統計で唯一気になったところを言えば、平均賃金かも知れません。
前年比5.6%という数字はやはり高いです。この数字が高いということは、インフレの高止まりにつながり、それを抑えるために政策金利が引き上げられる心配が高まります。政策金利が高まれば景気も株価も冷え込むので、投資家としては困ります。
そして、この平均時給の伸びはコロナが流行した前後で伸びが変わった点も気になっています。
次のグラフは2022年3月までの数年間の平均時給の伸びを追いかけたものですが、コロナの前後で賃金の伸びは大きく変わっています。
この背景になるのは、人手不足です。
アメリカでの雇用者数を調べてみると、従業員の人数がコロナ前後で大きく変わっていることがわかります。
もともと雇用者数は増加傾向にあったアメリカですが、今はコロナがなかった場合に比べて大きく人手不足が起こっています。
景気は既にコロナ前より良くなっているのに人手が足りないので、賃金を上げてでも人手を確保しないといけない状況になっているようです。
問題はグラフを見る限り、この人手不足がすぐには解消できそうもないことです。
毎月の雇用者はたしかに増えていますが、上のグラフの人手不足が解消されるためには、今のペースだとまだ数年の時間がかかるのではないかとさえ思えます。
となると、アメリカのインフレがコロナ前(消費者物価で2%程度)に戻るにも、まだまだ数年の時間がかかるのではないかと私は思っています。