昨日より今日を良くする学び
「大人になったら、勉強しなくていいんだよね」
まだ就学前の娘に、ドキッとすることを聞かれることがあります。でも良い質問ですね。大人でもしばしば議論になるテーマです。
つい先日、不登校ながらYoutuberをやっている少年に対して、いろんな大人が賛否を述べているニュースが流れていました。勉強や義務教育についてはほぼ全員が通ってきた道なので、みんながみんな色んな意見を持っていているんでしょう。
私は生き方に口を出されるのも、口を出すのも好きではないのでYoutuber少年に賛成も批判もしませんが、顔も名前も知らない大人に批判されるのも可愛そうですね。
この件に限らず、日本では何かあると自分は批判されない安全な場所から「こうあるべきだ」と人のことを批判をしますが、もっと他人に寛容な社会になったらいいのにと思います。ただでさえ、高齢化して人口が減る過疎化現象が起きているのに、人の生き方に口を挟み、はみ出た人を叩くとなると、日本全体が村社会みたいで生きにくいです。
話を戻して「大人になったら、勉強しなくていいか」というと、学校で学ぶような授業や教科書的な勉強は別に必要がなければしなくていいと思います。大人になったら必要なのは勉強というよりも仕事や副業で上達することでしょうし、日々少しでも何か学びを得て、昨日より今日いい仕事ができているなら勉強は別にいらないと思います。
「自然界には存在しない複素数っていう数学を勉強してたおかげで、最近めちゃくちゃ仕事がはかどるぜ!」という人に私はまだ出会ったことはがないです。実は、この複素数は人間ドックなどで使われる検査機器MRIなどにも応用されているのですが、MRIを理論から学んで高速で高精度な画像処理の方法を考えたいという人は、その時にちゃんと複素数を勉強すればいいと思います。
投資に関する学びを振り返る
そんなゆるい感じで、投資に関しても度々失敗しては、少しずつ学びを得てきたつもりの私ですが、ここらで一旦学んだ内容を棚卸しするのもいいかなと考えています。いくつかの内容は既にブログの記事で書いていいて重複する内容もありますが、時系列に投資した内容とその学びを振り返ってみたいと思います。
- FX(2007-2009年)
- 高利回りな不動産投資信託(2010-2013年)
- 米国株の長期投資(2013年-現在)
FX(2007年-2009年)
今思えば、投資を始めた初期の頃になぜこのFX(外国為替取引)に手を出したのか、わかりません。まだどんな金融商品があるか吟味すらできていなかったと思います。
当時注目を集めていたのは、円を売ってトルコリラを買うという商品がありました。トルコリラは当時18%ほどの金利があったので、FXのレバレッジという機能を使って5倍の取引をすると、1年間保有し続けるだけで年率90%(!?)の利回りを得られる商品に投資していました。
しかし、今考えると年率90%って闇金融もびっくりな高利回りですね。その時点でヤバイ投資だと思えないほど、初期の私は素人でした。まだ学生だったので仕方ありません。日本の預金の金利が限りなく0%に近いことを考えると、大変魅力的な商品に見えたんでしょうね。浅はかでしたね。こういう甘い話にホイホイついていく私でしたが、ちゃんと投資の洗礼を浴びることになります。
レバレッジはうまく使えばリターンが数倍になるのでありがたいのですが、損を出すときには損も数倍になります。このトルコリラ5倍作戦に100%投資していた私は、サブプライムショックとリーマンショックを迎えて、綺麗に何度も全額を失いました。レバレッジが5倍なので、20%下落すると全額消失するのですが、ほんとに何度全滅したか覚えてないくらい全滅しました。
大幅下落から数ヶ月経って価格が回復して不況の底を抜けた思ったら、すぐにまた大きな下落がくるのです。荒れた市場の価格の予測は本当に難しかったです。
ただ投資1年目に運良く100年に一度の不況の洗礼を浴びたことで、実に多くのことを学びました。多くのものを失った結果、良い経験が手元に残りました。
- 失敗したら全滅する投資方法はしない。特に、レバレッジをかけた投資はしない。
- 不況時の価格下落は数ヶ月ではなく、1年以上長い時間をかけてズルズルと価格が下る。底値だと思っても、まだ下がる。
- 短期の相場ほど、読みにくい。10年後より1年後、1年後より1日後の相場のほうが、格段に予測が難しい。
- 不況では40-50%価格下落が起こることを見越して、価値が半分になっても市場に生きたまま残れる投資をする。
高利回りな不動産投資信託(2010-2013年)
さて、さすがにアルバイトで貯めたお金を何度も失って、投資の方法を見直すことにしました。「金持ち父さん 貧乏父さん」の影響を受けて、不動産投資に対する憧れもありましたが、アルバイトの年収でローンを組めるはずもなく、少額から投資ができる不動産投資信託を始めることになります。
この時、私はとにかく分配金と呼ばれる毎月もらえるお金の利回りが大きいものに注目して投資をしていました。この利回りは毎月2%ほどで、単利で単純計算しても年間で年率24%と、トルコリラ作戦に比べたらずいぶんと安定した利回りです。
冷静になって見てみると年率利回り24%ですら相当高利回りなヤバイ投資なのですが、トルコリラ5倍作戦の年率90%に比べたらその凄さが霞んでしまうくらい、トルコの破壊力はすごかったですね。
ただし、ここも罠があります。ちょっと調べるとよく分かるのですが、高すぎる分配金は実際は資産の一部を売却したり、積み立て金を取り崩したりしているため、毎月ザクザクと多くの分配金をもらっているように見えて、実はその一部は自分の投資したお金を取り崩しているだけという手の商品でした。いわゆる、タコ足配当と呼ばれるものです。
しかし、投資した時期がリーマンショック後の景気回復期だったため、こんなまともでない投資でも、ものの2-3数年で資産は数倍になりました。2013年の日銀黒田総裁の金融政策によって大きく円安に振れたことで、円換算での資産が急増したのも要因の一つでしたが、このタコ足配当の謎な投資のおかげで、私は結婚資金を貯めることができました。
その節は、大変お世話になりました。でも二度とあなたのようなまともでない投資にお世話になることはないでしょう。
この時の学びは以下3点です。
- 高すぎる分配金(タコ足配当)の金融商品は結果的に得られるリターンが少ないので、今後保有しない。通常高水準でも年率利回り3-5%程度の商品に絞る。
- 不況で生き残ったあとに絶好の投資チャンスが訪れる。
- 不況時の景気回復期では、どんな資産を持っていたとしても、市場にさえいればリターンは得られる。つまり、不況の下落でもまずは生き残ることがやはり重要。
また、タコ足配当のまずい点はずいぶんと早い時期から認識していました。なので、今後は歴史に裏打ちされた持続可能な投資を探し、もっと簡単に言えば「まともな投資」を目指して、この時期はさまざまな本を読んで、次は米国株の長期保有のスタイルを挑戦することになります。
この時に「まともな投資」を目指して学んだことは、今の投資の基礎になっています。この学びは、こちらのページにまとめています。
米国有名企業への長期投資(2013年-)
まず投資したのはエクソンモービル、コカ・コーラ、P&Gなどのダウにも採用されている有名な老舗企業です。
でも、もともと「まともでない投資」に長年無駄に時間とお金を費やしてしまった失敗から、米国株の老舗企業だけ長年投資して失敗か成功かを数年に1回検証するのではなく、米国株の中で少額で並行していろいろなテーマで実験もしようと考えました。
投資で試したのは、次の項目です。
- ダウ銘柄に採用される老舗大企業への投資(2013年-)
- 配当金利回りの大きい銘柄への投資(2014年-)
- Facebook、Amazon、Netflix、Google(FANG)など大手ITへの投資(2014年-)
- 小型株への投資(2015年-)
そしてこの5-6年でまだ実験の答えが出ていないものもありますが、現時点ではそれぞれ次のような学びを得ています。
- ダウ銘柄の中でも、市場平均を強く押し上げているのは数名柄だった。エクソンモービル、IBM、P&G、コカ・コーラはひどい成績だった一方で、ビザ、ボーイング、(保有してないけど)マイクロソフトは平均を大きく押し上げた。次の課題は、良い成績の企業を見分けることで、現時点の有力仮説は寡占企業の経済的な濠が一因かと考えている。ビザ、マイクロソフトは今後も注目銘柄。
- 配当金は重要だが、最重要項目ではなかった。配当金の大きさに目をつけて投資した後に、減配して配当金も株価も大きく下がったフリーポート・マクモランで痛感した。配当金を毎年引き上げるための一株利益とフリーキャッシュフローの成長が維持できているかが重要とわかった。また、自社株買いも配当金と同じ効果があるので、配当金だけ見ていては片手落ちだった
- FANGは直近の5年間では、もっともうまく行った投資だった。FANGの価値の源泉は深い経済的な濠で、IT企業は次の事業を始める時の投資資金が大きいほど優位に働くケースが多く、一度成功したFANGが更に成功する仕組みがある。またネットワーク効果(経済的な濠の一つ、詳しくはこちらを参照)も効く場合が多いことも、FANGがますます成功する要因。今後もこの分野の投資は続ける。
- 小型株は成功した時のリターンの大きさを夢見て投資したが、現時点でうまく行っているのはMongoDBくらいで、FANGほど高リターンをもたらしていない。またGoPro、ブルーエプロン、ハビットレストランなど大きく株価を下げる銘柄も多く、不確実性が高い。この領域の見極めはまだまだできていない。自分が得意なIT企業であれば、限り引き続き小型株を続けても良いかも知れない。
参考:【初心者向け】バフェットも注目する経済的な濠とは何か。
まだまだ失敗を繰り返しながら、勉強中なので、今後も投資スタイルに区切りがつき次第更新していきます。
今後のFANG銘柄への期待
また現時点では、成長期を迎えたFANGが今後自社株買いや配当金といった株主還元策を増やしていくのかに注目しています。アップルやGoogleでは既に株主還元を進めていますが、こうした動きが本格化するなら、これらの企業が成熟期を迎えて株価が今より上がった状態で配当金を潤沢に出してくれる理想的な展開が生まれる可能性があります。
今保有している株が2倍、3倍に株価が上がって成熟期を迎えた時に3%の配当金を出してくれれば、それは6-9%の利回りの価値があります。かつて企業の成長期に安値で株を買い、数倍の株価になった状態で連続増配し続ける高配当を受けとったバフェットにとってのコカ・コーラのような銘柄に化けるかが注目です。