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マイクロソフト、好決算でも株価を下げた理由【20年7-9月決算】

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マイクロソフトの21年度第1四半期(20年7-9月期)決算が発表されました。

7-9月期は売上も利益も予想を上回る好決算でした。ここだけで判断するなら、株価が上昇してもおかしくなかったと思います。

ただし「あれ?」と違和感があったのは、10-12月期の弱気なガイダンス(売上見通し)です。

マイクロソフトによれば、10-12月の売上は395億ドルから404億ドルになるといいます。まず事前予想(404.3億ドル)を下回っている点が良くないですが、それ以上にこの数字には弱い印象を受けました。

395億ドルから404億ドルの平均値は399.5億ドルで、この平均値だと前年の売上からわずか+8%しか伸びていないことになります。これはマイクロソフトが「10-12月は二桁成長できないかも」と言っていることを意味します。

7-9月期の決算は良かったのにも関わらず、株価は決算発表後に約2%ほど売られていますが、恐らく弱気なガイダンスを投資家が嫌がったためと思われます。

この記事のポイント

  • マイクロソフトの決算は、利益・収益ともに事前のアナリスト予想を超える良い内容だった。
  • 前期に大きく売上成長率を下げたクラウド(Azure)の成長率は下げ止まり、わずかに再加速の兆しを見せた。
  • しかし、10-12月期のガイダンスは予想を下回り、その平均値は前年比+8%程度だったことから株価は売られた。

近年のマイクロソフトは2018年から成長が加速して20%超えの成長率を見せ、2019年でも二桁成長は軽く超えていたので、マイクロソフトを成長株だと思っている投資家も少なくないです。その投資家にとって、+8%成長は物足りなさを感じたはずです。

2020年7-9月期決算

7-9月期の業績は売上も収益も予想超えて、良い内容でした。

  • 一株利益:1.82ドルで、予想を0.28ドル上回る。
  • 収益:372億ドルで、予想を14億ドル上回る(前年比+12.4%)。
単位B:10億ドル 21Q1 前年比
収益 $37.2B +12%
営業利益 $15.9B +25%
純利益 $13.9B +30%

以下の売上成長率の推移を見てみても、2020年にコロナで世界の経済が大きなダメージを負ったことを感じさせない強さがあります。

あとで、マイクロソフトの今後の売上成長率の話がでてくるので、「2018年は約+20%の売上成長」、「2019年でも二桁半ばの成長」をしてきたことを上のグラフで確認しておきましょう。

部門別売上

今期のマイクロソフトの部門別の好不調もサラッと確認していきます。

部門説明

  • プロダクティビティ&ビジネスプロセス部門:Word・Excel・PowerpointなどのOfficeソフト、CRM(顧客管理)製品のDynamics、LinkedInを提供する部門。主にソフトウェアを扱う。
  • インテリジェントクラウド部門:クラウドコンピューティングのAzure、Windows Server、SQL Server、GitHubなどの製品の提供と、企業向けのコンサルティングサービスを行う部門。
  • モアパーソナルコンピューティング部門:Windows OS、Surface PC、bing検索、Xboxを提供する部門。

3つの部門のうち、売上規模が大きいインテリジェント・クラウド部門が+20%成長で全体を押し上げました。

単位B:10億ドル 21Q1 構成比 成長率
プロダクティビティ&ビジネスプロセス部門 $12.3B 33% +11%
インテリジェントクラウド部門 $13.0B 35% +20%
モアパーソナルコンピューティング部門 $11.8B 32% +6%
合計 $37.2B 100% +12%

前期はオンライン授業やテレワークでPCが売れたおかげで「モアパーソナルコンピューティング部門」が好調でしたが、今期はその勢いがやや衰えた印象を受けます。

しかし、成長の牽引役のインテリジェント・クラウド部門が復調の兆しを見せて、全体の売上を支えたようです。

このインテリジェント・クラウドの復調の影で、クラウド・コンピュータ(Azure)の売上もわずかに復調しているのは良いニュースでした。

投資家は弱いガイダンスに失望

ここまで見たきたように、7−9月期のマイクロソフトの業績はかなり好調でした。

問題があるとすれば、10-12月期の売上見通しでかなり弱い数字をマイクロソフトが提示したことです。

弱かった20年10-12月期のガイダンス

  • 売上見通し:395億ドルから404億ドル(前年比+7%から+9%成長)
  • 事前予想:404.3億ドル(前年比+10%成長)

冒頭でお話したように、このガイダンスはマイクロソフトが「二桁成長は難しいかも」と言っていることを意味します。

マイクロソフトは毎回ガイダンスや事前予想を上回ってきている銘柄なので、実際に10-12月の決算発表で10%超えの成長を見せることは多いにありえる話だと思いますが、この弱いガイダンスに投資家はガッカリして、決算発表後に株は売られたと思います。

ただ、株の下落は残念ですが、必要な下げだっただった可能性もあります。

マイクロソフトは良い企業だと思いますが、投資家からは今後も成長を続ける高い期待を背負って高い株価がついていたので、一旦期待を下げるために弱いガイダンスを出したり、一時的に売られるのはむしろ健全なことかも知れません。

長期的にはマイクロソフト株は保有して問題ないと思っています。ただ、今はまだ高い株価がついているので、短期的には伸び悩んでも不思議ではなさそうです。


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