モルガンスタンレー、Amazonの宇宙ビジネスに強気予想
未来の話をするのは、いつでも楽しいものです。それが不治の病の研究や宇宙に関することならば、なおさらです。
そして、いつも冷静な分析が求められる投資銀行のモルガン・スタンレーの中にも、Amazonの未来に明るい光を見ているアナリストがいるようです。
モルガンスタンレーは宇宙開発業界が今後20年(2039年)で1兆ドル(110兆円)の規模に成長し、Amazonが計画している人工衛星を使った高速ネットワーク網も1000億ドル(11兆円)のビジネスチャンスがあると、強気の予想を立てています。
5年後のビジネス規模を当てるのも難しいのに、20年後の遠い将来のことなので更に予測は難しいのは事実です。しかし、本当にモルガンスタンレーの予測どおりになるのなら、1000億ドルの人工衛星ビジネスは主力ではないにしてもAmazonの収益の一角にはなる可能性があります。
モルガン・スタンレーはAmazonの宇宙ビジネスの中でも、特に人工衛星を使った高速ネットワーク環境の構築が、最も収益を上げやすいと期待を込めています。
「いやいや。そもそもAmazonは宇宙ビジネスなどやっていたんでしょうか」という方もいると思いますので、そういう方はこちらの記事も合わせて御覧ください。
3000個の人工衛星で世界中にインターネットを。Amazonが進める宇宙開発。
Amazon株は直ぐに買ったほうが良いのか
さて、ここからが本題です。モルガン・スタンレーが息巻いている宇宙ビジネスですが、この強気予想を受けて「よし、Amazonの株をすぐ買おう!」と行動に起こしたほうがいいのでしょうか。
それを判断しようにも、モルガン・スタンレーが試算した「人工衛星ビジネスによる20年後の1000億ドルの売上増加」が、Amazonにとってどれくらい大きいかがいまいちピンとこない人も多いかと思います。少なくとも、私はピンと来ませんでした。
なので、直近の決算データから20年後のAmazonの売上規模を皮算用して、それと比較して人工衛星ビジネスが与えるインパクトが大きいか小さいかを見てみましょう。
20年後のAmazonの売上を試算してみる
さて、決算によると2018年の1年間のAmazonの売上は約2300億ドルです。2018年の売上成長率は前年比30%ですが、直近の四半期の発表では売上成長が鈍化しているので、今後20年間は1桁後半(約7-8%)の売上成長をすると仮定しましょう。
電卓を叩いて2300億ドル×(1.07の20乗)を計算しても良いのですが、電卓を取りにいくのも面倒なので、暗算をします。
以前、このブログでも紹介した「72の法則」をつかうと、72 / 売上成長率7(%) = 約10年で売上が倍になるので、20年では4倍になるとわかります。
なので、20年後のAmazonの売上規模は、2300億×4倍=約1兆ドル弱になると予想できます。・・・簡単に言いましたが、すごい数字ですね。もはや立派な国家予算の規模です。
20年後のAmazonの売上規模と宇宙ビジネスの売上規模の比較
さて、モルガン・スタンレーが試算した20年後の人工衛星ビジネスは売上規模1000億ドルでした。20年後のAmazonの売上1兆ドルだったので、人工衛星ビジネスがうまく行けば、Amazon売上を10%くらい上澄みをしてくれると言っているわけですね。
なるほど、人工衛星ビジネスが儲かることを見越してAmazonの株を買ったとしても、そこまで大きな株価変動は起こらなそうです。しかも、2019年に投資をしたとしても、20年後の売上の増分が10%程度の上昇なら、宇宙ビジネスの規模が大きくなるからと言って、直ぐに飛びつかなくても良さそうです。
(※今後20年も売上成長が7%続くという仮定が、間違っている可能性もあります。あくまでも私の仮定ですので、投資はご自身の判断でお願いします)
なので、モルガン・スタンレーのレポートはいいニュースではありますが、宇宙ビジネスを材料にして、今すぐAmazon株に飛びつくほどのことではないことがわかりました。
ちなみに、私は全く別の理由でAmazonは買い増しを前向きに考えています。今後2-3年はクラウドコンピューティングが成長することが見込まれていて、その中心にいるのがAmazonです。20年後よりも、2-3年後の果実のほうが、私には魅力的に見えています。