昨日の記事で、アメリカで政策金利の引き上げはそろそろ止まり、数ヶ月以内にも利下げが始まるという話をしました。
また、最近ではFRBが銀行救済に大きな舵を切っているために、FRBの資産額が増える現象(ドルを印刷して世の中に提供する動き)まで起こっています。
利下げが近い上にFRBの資産も拡大していると聞くと、投資家なら思わず金融緩和を連想してしまいます。
FRBは金融緩和をしている意識はないのでしょうが、既に市場では金融緩和の気配が漂っている気がします。
この記事のポイント
- 市場はアメリカの利下げを早くも折り込み始めている。
- 3月中旬からFRBが銀行救済に大きく動いたことで、ドルが印刷されて世の中に供給されており、実質量的緩和のようになっている。
市場に金融緩和の気配
リーマンショック以降、アメリカでの金融緩和というと次の2つが行われてきました。
- 政策金利の引き下げ(利下げ)
- FRBの資産拡大(量的緩和、バランスシート拡大)
この2つはまもなく始まる兆しが見られます。いえ、既に市場は織り込んでいるような動きが見られます。
3月24日時点での市場の政策金利予想を見てみると、2023年7月からほとんど毎回のFOMCで利下げが予想されています。
また、最近の銀行救済のためにFRBが大量に銀行に貸付を増やした(ドルを提供した)ことで、FRBの資産が大きく拡大しています。
量的引き締めで資産の額を毎月のように減らしてきましたが、3月中旬から銀行救済のためにドルを供給しだして、わずか2週間で資産額は2022年10月の時点まで巻き戻されています。
FRBは金融緩和をしている意図はないはずですが、これだけ急にドルの印刷が行われれば、市場は金融緩和と同じような反応をします。
FRBが最初の銀行救済案を発表した3月12日以降、米国株の株価が上向きになっているのは偶然の一致ではないはずです。
ただし、株の買い場はまだ
この記事のタイトルだけ見ると、「金融緩和が近いから株は買い」と誤解されそうなので、最後に少しだけ補足をしておきます。
金融緩和と同時に買いになるのは、ゴールドと米国債です。米国株もしばらく上昇するかもしれませんが、次に何かのショックが起こったら(例えばより大きな銀行が潰れるなどが起こったら)、株は大きく下落するはずなので、まだ米国株の買い場は来ていないと思っています。
イメージするなら、ちょうど2019年のような感じです。
2019年も短期金融市場で金利が急上昇するショックがあった後で、FRBはドルを供給して資産額を増やしました。その数ヶ月前から行っていた利下げもあって株価は大きく上昇しましたが、結局は2020年のコロナショックで株価は大きく下げています。
2020年のコロナは予測不可能なイベントで参考にはならないと思うかも知れませんが、2020年当時のアメリカは景気拡大の終盤で企業の債務負担も大きかったのでコロナショックが起こっていなければ別の不況や危機が起こっていたはずです。
この記事では、アメリカの市場に金融緩和の気配が漂っていることを書きました。ゴールドや米国債はこの恩恵を受けて上昇が見込めますが、株に関しては少し注意が必要で、今後の景気減速で今以上に大きく株価が下がるかも知れないリスクがあると私は思います。