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コロナ収束を見据える株式投資家と、冷静な債券投資家

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新型コロナウイルスのワクチン開発の道は、今のところかなり順調に来ているように見えます。

先日のファイザーの良好な試験結果の公表に続いて、モデルナ社も最終試験で94.5%の高い確率で感染を防ぐ効果があると発表しました。

>>モデルナの新型コロナワクチン、感染予防に高い効果-暫定結果(ブルームバーグ)

まだ両社のワクチンがどちらも使用許可が降りない恐れもあるのですが、市場の株式投資家はかなり楽観的な見方をして、米国株は上昇しています。

ただ、コロナ収束を見据える米国株の投資家と違って、慎重派が多い債権投資家の見方はやや冷静だったようです。米国債の価格はほとんど値動きせず、長期金利も安定したままでした。

投資家の中でも意見は割れているようです。

この記事では、ファイザーが試験結果を公表した11月9日と、モデルナが公表した11月16日の市場の動きを振り返り、投資家たちが何を考えているのかを、推測していきます。

この記事のポイント

  • 先日のファイザーに続き、米モデルナ社も効果の高いワクチンの開発に成功している報道があった。
  • 米国株の投資家の多くは、ワクチン開発にかなり楽観的になっている。ワクチンが承認されてコロナが収束した後に、業績が回復するエネルギー業界や金融業界の株が大きく買われている。
  • 債権投資家はモデルナ社のワクチンの報道があっても、ほとんど反応しなかった。ワクチンが承認され、ウイルスが収束する確信にはまだ至っていない模様。
  • 債券投資家がウイルスの収束を確信すれば、コロナ前の水準以上に長期金利が上昇する可能性はある。金利の上昇は株価には悪影響なので、金利の影響を受けやすい割高なIT銘柄はまだ下落する局面があるかも知れない。

コロナ収束を見据える株式投資家


株式投資家はかなりワクチンに楽観的になっているようです。

今までコロナで悪影響を受けにくいハイテク株を中心としたナスダック銘柄に投資する人が多かったのですが、ファイザーのワクチンの良好な試験結果が出てきた11月9日、モデルナの発表があった11月16日はこの流れに変化が見られます。

ワクチンのニュースで「ダウ銘柄もワクチンで業績が回復するから買いだ」と言って、ダウに資金が集まっているかのようです。

つまり、株式投資家はまだワクチンの承認も接種も始まっていないにも関わらず、コロナ後の業績回復を見越して投資しているように見えます。

コロナでダメージを受けた業界が買われる

業界ごとに株価の上昇率をみてみると、株式投資家の心理がもっとよく見えてきます。

2020年はコロナで景気が冷え込んでエネルギー需要が大きく落ちて、エネルギー業界の株も大きく下落したのですが、11月9日と16日はワクチンによるコロナの収束を期待してエネルギー関連銘柄が大きく上昇しています。

また、コロナが収束すれば貸倒れのリスクが減って、金融業界は利益が回復するので、金額業界の株もかなり大きく上昇しています。

逆に、2020年に今まで好調だった情報技術(IT)業界の株は、ワクチンのニュースを受けて調子を落としているようです。

IT銘柄は下げ止まったのか

ファイザーの良好な試験結果が出てきた11月9日はIT銘柄は株価を下げましたが、今回のモデルナの発表があった11月16日のIT銘柄は上昇して終えました。

これを見て「IT銘柄はもう下げ止まったのではないか」と考えられなくもないですが、私はまだIT銘柄は下がるかも知れないと慎重な姿勢でいます。

一般的には金利が上昇すると、既に割高なIT銘柄などを中心に下落しやすくなる動きがありますが、今後、債券投資家が国債を売って、金利が上昇する恐れがまだあると思っているからです。

冷静にワクチンを見極めようとする債権投資家


さて、IT銘柄が下落するかは金利(債券投資家が国債をこれから売るかどうか)にかかっているように見えるので、債券投資家の動きも確認しておきます。

11月9日のファイザーのワクチンのニュースが流れた日こそ、債権投資家は「有望なワクチンができるなら、安全資産の国債を手放しても良さそう」と言わんばかりに、国債を売って金利(10年国債利回り)が上昇しましたが、モデルナの報道があった11月16日はほとんど反応しませんでした。

「既にワクチンの影響を全て織り込んだのでは?」という考えも浮かびますが、それは少し違う気がします。

本当にワクチンが承認されて、世界中でコロナが収束に向かうと債権投資家が確信しているなら、金利はコロナ前まで上昇してもおかしくないのです。しかし、まだ金利(米10年国債利回り)は低いままです。

米10年国債利回りはコロナ前よりも低い

債権投資家には用心深い人が多いので、ワクチンが承認されるのか、コロナが収束に向かうのかを冷静に見極めようとしているようにも見えます。

だとすれば、まだこれから国債は売られて金利が上昇する恐れもあるので、金利の上昇の悪影響を受ければIT銘柄もまだ下がるかも知れないと考えています。

ゴールドもやや不調が続きそうな気配


最後に、ゴールドについても少し触れておきます。

2020年にインフレ対策でゴールドを保有し始めた投資家が世界的に出てきていると聞きますが、このゴールドへの投資も短期的に潮目が変わっているのを感じます。

原油もゴールドも同じくインフレに強い商品ですが、ワクチンでコロナが収束して景気が上昇すればエネルギー需要が増えてくるとの期待から、原油価格のほうが勢いよく伸び始めています。

長期的には、アメリカ政府は債務を発行しすぎてドル安やインフレが進む恐れがあるので、ゴールドは資産の数%〜十数%持っていても良いはずと思っていますが、景気回復の傾向が続く環境では、ゴールドは調子を落とす恐れがあります。

少し長くなったので、この記事で考えたことをまとめて終わりにしたいと思います。

この記事のポイント

  • ワクチンの開発が進むにつれて、石油・金融業界の株が買われている。
  • IT銘柄など2020年好調で株価が大きく伸びた銘柄は、これから債権投資家が国債を売って金利が上昇すれば、その悪影響を受けて価格が下落する恐れがある。今後、数ヶ月はまだ注意が必要そう。
  • 2020年ゴールドは好調だったがワクチン開発が進んで、やや調子を落としている。今後1-2年なら景気回復の恩恵を受ける原油や石油関連銘柄のほうがインフレ対策の資産として保有しやすいかも知れない。

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