このブログでは、2023年にアメリカのインフレ率は低下が見られるはずだと年始から書いてきました。
しかし、現時点では物価変動の大きいエネルギーや食品を除いたコアと呼ばれるインフレ率はまだ下がっていないという意見が多いです。
でも、そろそろ変化が出始めるかもしれません。
ニューヨーク連銀によれば、高止まりが続いているアメリカのコアインフレでも、基調的なインフレ率は既に大きく低下を始めたと言います。
この記事のポイント
- ニューヨーク連銀は4月の基調的なインフレ率を公開した。
- 基調的なインフレ率は既に低下を始めており、まもなくアメリカのPCEコアが低下を始めてもおかしくないことを示している。
アメリカのインフレ率のおさらい
この記事を書いている時点でわかっているアメリカのインフレ率について、振り返ってみたいと思います。
FRBが2%の目標にかかげているインフレ率に、PCEデフレータというものがあります。PCEデフレータは実は既に2022年にピークをつけて低下をしています。
しかし、価格変動の大きいエネルギーや食料品を除いた数字(PCEコアデフレータ)を見てみると、下の図ようにまだまだ高止まりが続いており、目標とする2%に向かっている動きは見えません。
以上の2つのことを考えると、PCEは下がっていてもそれは価格変動の大きなエネルギーや食料品のインフレが落ち着いただけで、その他の品目は2%を目指したインフレの鈍化はまだ進んでいないのではないかと考えられています。
だからこそ、「まだ利上げが必要」という話が出てきたり、「金融引き締めを長く続ける必要がある」という議論が起こっているように感じます。
アメリカの基調インフレは3月から急低下
しかし、ニューヨーク連銀の調査が正しければ、既に4月の時点でアメリカのPCEコアデフレータもインフレ鈍化トレンドに入ったかもしれません。
ニューヨーク連銀はPCEコアデフレータの数字から「基調的なインフレ率(MCT)」を算出して毎月発表していますが、3月と4月の基調インフレ率では大きな鈍化が見られました。
上のグラフでは、ニューヨーク連銀が算出した基調的なインフレ率を水色で描いていますが、3月と4月に大きな鈍化が見られます。
現時点のPCEコアは5%弱で高止まりはしていますが、4月の基調的インフレは3.5%で低インフレが進んでいます。
3.5%のインフレ基調というのは数字は、2020年のパンデミック開始時からわずか1.5%高いところにいます。
上の図で1.5%分の基調インフレを押し上げている項目の貢献度(≒内訳)を見てみると、財(モノ)だけでなく、住宅も住宅を除くコアサービスもどれも最近は基調インフレが低下しています。
このようにベースとなる基調インフレが低下しているなら、そろそろアメリカのPCEコアも鈍化が始まってもおかしくなさそうです。