困ったなと思っていることがあります。最近数ヶ月のアメリカですが、どうもインフレがわずかに力強くなっている気配があることです。
私はまだインフレ再燃を本気で信じているわけではありませんが、今後数ヶ月は注意したいと思っています。
この記事のポイント
- 最新のニューヨーク連銀の発表では、アメリカのPCEデフレータのトレンドが上昇に転じた。
- その他の指標でも、最近数ヶ月でアメリカのインフレ圧力が強まっているデータがいくつも見られる。
- リアルタイム性の高いデータではアメリカのインフレは収まっているように見えるのでまだ心配していないが、今後もインフレデータは要注意。
やっかいなインフレトレンド上昇
昨晩、アメリカのPCEコアデフレータ(FRBが注目しているインフレデータ)のトレンドを数値化したデータがニューヨーク連銀から発表になりました(下図の青線)。
残念ながら、この数カ月間でアメリカのインフレ圧力は再び小幅に上昇している様子が伺えます。
このようなデータを示しているものは、上記以外にもあります。
次のグラフは消費者物価コアというインフレデータの中で、粘着性の高い(一度価格が上がると下がりにくい)ものだけを集めて価格の伸びを調べたものです。
過去3ヶ月間の伸びが1年間続いた場合のインフレ率をグラフにしましたが、最近は伸びが上昇しているように見えます。
この通り、残念ながら順調に低下が進んでいたアメリカのインフレ鈍化が後退している印象を受けます。
インフレ上昇による影響
こういう話をすると物価上昇のピークを何度も繰り返した1970年代のアメリカの再来が頭をよぎる人もいると思います。
たしかに、2024年1月までのアメリカの消費者物価のデータを見てみると、1970年代にとても良く似た動きをしています。
もしも本当にインフレが再燃するなら厄介なことです。
インフレが再燃しなくても下がらないというだけでも面倒かもしれません。利下げ開始の開始は遅れて、2024年に3回あると思われていたアメリカの利下げは回数が減る恐れがあります。
利下げの遅れや回数減少は国債にとって特に逆風です。米国株も他人事ではなく、米国債に対して米国株の割高感はさらに増せば、いずれさがるリスクが大きくなります。
ただ、私としてはまだインフレ鈍化トレンドは続いている可能性のほうが高いと思っています。
消費者物価やPCEデフレータなどの政府発表のインフレデータはアメリカ経済の実態よりもかなり遅れて数字に反映されることが知られています。
これらよりもリアルタイムなデータを提供しているTruflationなどを見ていると、今のアメリカはインフレ再燃というよりもデフレ的な印象すらあります。
なので、私はまだアメリカがインフレ再燃に動き出したとは思っていません。
ずっと言っていることなのですが、恐らくインフレ再燃があるとしたら次の景気後退後になるのではないかと思います。
次の景気悪化時にまたタガが外れたような景気刺激策を米政府が打ち出せば、その時には本格的に1970年代のようなインフレ時代の再来になるはずです。