この1週間メディアと個人投資家は、株価が急上昇したゲーム販売店のゲームストップ(シンボル:GME)の話を盛んにしていたように思います。
この銘柄は1日で株価が倍になるような日もあり、2021年1月だけで株価は17倍になりました。
ゲームストップ株が乱高下する一方で、その他の米国株は全体的に下げているので、何か大変なことが起こっているかのように話をしている人が多い印象です。
毎日ゲームストップの株価は乱高下しているのでデイトレーダーにとっては大きなイベントに見えることは理解できますが、中長期的な投資を意識している私にとってはあまりこのイベントの重大さがわからずにいます。
ゲームストップ株は買われ過ぎで、いつ下落しても不思議ではないので、買う対象にはしていません。また、ゲームストップがブームになってから米国株全体の値動きが不安定になっているとの見方もありますが、米国株全体への影響も一時的で何もしなくていいと思っています。
私だけではなく、市場もまだこのイベントを重要だと思っていないようなので、この記事で市場の動きを改めて見ていきたいと思います。
この記事のポイント
- ゲームストップの株価乱高下が話題になってから、米国株は全体的に下げているが下げ幅は大きくない。また恐怖指数の下げ幅も限定的。
- 市場全体に悪影響が出るとき、真っ先に反応する警戒心が強い債権市場が何も反応していない。
- 現時点では、市場全体が悪化するような2020年コロナショックや2008年リーマンショックのような大きな下落になる兆候はない。個人的には今回の下落は一時的なもので終わる可能性が高いと見ている。
そもそも何が起こっているの
とっても簡単に説明すると、SNS上で集まった個人投資家がゲームストップの株を集中的に買い、株価が上昇しています。
もともとゲームストップはコロナ前から業績が低迷するなど不調が続いていて、株価が下がることに賭けていたヘッジファンド(プロの投資家)が今回の株価上昇で大きな損を出しているようです。
個人投資家がゲームストップの株を買う資金を確保するために別の株を売ったり、損を出したヘッジファンは他の株を売って損失を埋めたこともあり、ゲームストップ以外の株価は不安定で下落しやすくなりました。
このような中で米国株の恐怖指数(VIX)と呼ばれる数字も上昇してきました。VIXが上昇した場合、株の一部を現金化して様子見をする運用スタイルをとるプロの投資家もいるので、1月25日からの週は米国株が全体的に低調になっていた気がします。
その他にも一部の証券会社や投資アプリでゲームストップ株などの取引を中止したり、色んなことがあり、メディアと個人投資家の話題の中心になっていました。
でも、個人的にはこのイベントにはまだ特別な警戒をしなくて良いと思っています。
でも、市場は急落しているじゃないか。
ゲームストップの話は、中長期投資家の目線ではそれほど気にしなくて良いと思っているのですが、「それでも株価は全体的に下げているじゃないか」という指摘ももっともです。
1月25日から始まった1週間の米国株S&P500の値動きを以下のグラフで見てみると、たしかに1ヶ月の上昇分をすべて失うほど下落しています。
でも、中長期投資家が見ている目線はこうです。以下、5年分のS&P500の株価を見てみると2021年の下落は大きくないものだと気づきます。
でも、恐怖指数は上がっているじゃないか
「株価はまだ大きく下落していないだけだ。既に恐怖指数(VIX)はかなり上がってるじゃないか」という声もあると思うので、VIXの数字も確認しました。
しかし、上昇したといってもコロナショック後には何度もあったレベルまでしか上昇していません。
直近なら大統領選挙前と同じレベルで、今回が特別大きくVIXが上昇しているわけではなさそうです。
大統領選前の2020年10月もS&P500は下落しましたが、一時的でした。今回も同じ程度の下落ならあるかも知れませんが、少なくともコロナの下落の規模やバブルが弾けるような感じではなさそうです。
市場はとても冷静
ゲームストップ株などの一連の動きに、まだ特別警戒していないのは私だけではないようにも見えます。
普通なら債権投資家はとても慎重で危機を感じ取る能力が高く、もしも市場全体に大きな危機が訪れるならいち早く行動をとることで有名です。その債権投資家の動きを見ても、とくに目立った動きはありません。
債券市場はとても安定している
もしもコロナショックやリーマンショックの時のように、リスクの高い社債が急激に売られて安全資産の債権が買われたり、もしくは国債ですら売って現金化しなければいけないような状況になると大問題ですが、そのような兆候は債券市場からまだ何も拾えません。
つまり、今のところ株は下落してもその他の市場に影響が及ぶ話ではなく、株価の一時的な下落で済むレベルの話だと思われます。
さいごに
この記事では、最近になって個人投資家やメディアが声を大にしているゲームストップ株について書いていきました。
これからも経過観察は続けますが、まだそんなに警戒しなくて良いイベントだと思っています。
米国株の恐怖指数(VIX)は2020年の大統領選前と同じ程度で、コロナショック後にも数回あったレベルまでしか上昇していません。通常なら警戒心が強いはずの債券市場は、まったく反応すらしていないように見えます。
つまり、現状ゲームストップ株で熱を帯びているのはニュースサイトなどのメディアと個人投資家で、市場にいるその他の投資家は実は冷静に様子見を続けていると思われます。
もともと米国株は2021年1月までかなり順調に上昇していたので、10-20%の株価の下落はしてもおかしくありませんが、コロナやリーマンなどのような全力で逃げたほうが良い状況ではなく、年に数回見られる下落のような位置づけで考えています。