マスターカードは回復の足取りが重く、苦しい時期を迎えているようです。
2020年7-9月期(2020年第3四半期)の決算発表がありましたが、結果は悪かったです。
一株利益も収益も冴えなく、予想を下回りました。予想下回る決算は、2016年第4四半期以来で約4年ぶりでした。
クレジットカードの利用状況を見る限り、4-6月期の最悪期よりも消費は改善しているようですが、旅行や出張などの回復がかなり鈍かったです。特に海外旅行や国外出張先での決済国境をまたぐ決済は低迷が続いています。
売り上げ低迷の理由が旅行関連の支出の低迷なので、世界で新型コロナウイルスの収束しないと業績の改善は見えてきません。この企業はかなり高い利益率を持っていて魅力的な会社ではあるのですが、まだしばらく投資を見送っていも良さそうです。
この記事のポイント
- マスターカードの利益、収益ともに予想を下回る決算になった。予想を下回ったのは15四半期ぶりのこと。
- 4-6月に比べると世界の人々は消費を増やしてはいるが、新型コロナウイルスで大きく減少した旅行・出張の決済金額は回復がかなり鈍い。
- 興味深いのはアメリカでのカード利用金額は既に前年比でプラスに転じていること。長期での景気低迷が心配されているアメリカだが、消費はかなり戻ってきている様子。
業績は4-6月期から改善も大きなマイナス成長
マスターカードの決算を数字で振り返って行きます。
- 一株利益:1.60ドルで、予想を0.06ドル下回る(前年比マイナス26%)
- 収益:38.4億ドルで、予想を1.1億ドル下回る(前年比マイナス14%)。
マスターカードが予想を下回る決算を発表するのは、かなり珍しいです。2016年10-12月期以来、15四半期ぶりのことだったようです。
アナリストの事前予想を下回ったのも良くないですが、売上・収益ともに前年比で大きくマイナスが続いている点も良くないです。
今期は一株利益が前年比マイナス26%、売上がマイナス14%と低迷しました。
単位B:10億ドル | 20Q3 | 前年比 |
---|---|---|
収益 | $3.8B | -14% |
営業利益 | $2.1B | -21% |
純利益 | $1.6B | -27% |
(調整後)一株利益 | $1.60 | -26% |
売上と一株利益の成長率の推移を見てみると、4-6月期から改善はしていますが、回復はかなり弱いです。
旅行関連の支出が伸び悩むマスターカード
今期のマスターカードの低迷の原因はかなりはっきりしています。
旅行や出張が前年に比べて大きく落ち込んだ状態が続いたため、国際間決済での売上が伸び悩んだことです。
マスターカードは次の3つの収入源を持っていますが、国際間決済以外の収益は前年に比べて成長していました。
- 国内決済:カード利用金額に応じて、マスターカードが受け取る収入。
- 国際間決済:国境をまたぐ決済で金額に応じてマスターカードが受け取る収入。海外旅行や国外出張先での買い物も含まれる。
- システム利用料:マスターカードの決済処理システムの使用回数に応じて、マスターカードが受け取る収入。
国際決済の金額はかなり緩やかなペースではありますが、毎月改善しています。
しかし、決済金額や決済処理回数が既に前年比でプラス成長していることに比べると、国際間決済はやはりかなり低迷が続いていることがわかります。
アメリカの消費はかなり改善
ちなみに、今期の決算でマスターカードの決済金額は前年比プラス成長に転じましたが、カード利用金額を支えているのはアメリカのようです。
アメリカでは景気低迷が長引くのではないかという議論が4月からずっとされていましたが、他の国に比べるとかなり回復が早いことがわかります。
マスターカードの投資家だけでなく、米国株の投資家にとってもこのデータは良い兆候を示しています。
さいごに
マスターカードの7-9月期決算は、最悪期だった前期よりは改善したものの、利益・売上ともに大きなマイナス成長に沈んでしまいました。
低迷している理由が旅行・出張などの国際間決済の低迷なだけに、世界中で新型コロナウイルスの収束が見られないと本格的な業績回復が望めないです。他の銘柄よりも、長く苦しむことになるかも知れません。
Visaの決算記事でも書きましたが、新型コロナウイルスのワクチン承認が業績回復のための重要なイベントになりそうです。
またマスターカードの株価は9月と10月に下落したおかげで、だいぶ割高感は取れてきたのですが、それでもまだ予想される業績に対してやや割高な状況が続いています。
もう少し安くなってくれると魅力が出るのですが、マスターカードの株はまだ買わなくて良いかなと思っています。