マスターカードの決算発表がありました。事前のアナリスト予想を超えて決算発表に株価は上昇しましたが、内容はそれほど良くなかったと思います。
3月後半から新型コロナウイルスの影響がかなり深刻に影響を受けています。
かろうじて1-3月期は利益も収益もともに前年比+3%のプラスで終えることが出来ましたが、3月後半から4月にかけてマスターカードの決済処理金額が急減速しています。
この記事のポイント
- 収益・利益は予想は上回ったが、ともに前年比+3%上昇にとどまった。
- 前期は利益+26%、収益+16%で成長していたが、急減速した。売上の減速は3月後半から始まり、4月まで低迷が続いていている。
- ただし米国と米国以外の決済金額の推移を見ると、米国は世界に先駆けて決済金額減速に底打ちの兆しが見ている。
- ライバルのVisaと比較したときに、Visaのほうがマスターカードよりも米国の売上比率が高い。マスターカードの回復はVisaよりも時間がかかるかもしれない。
2020年1-3月期結果
マスターカードの2020年1-3月期の結果を振り返ります。
この記事のポイント
- 一株利益:1.83ドルで、予想を0.1ドル上回る(前年比+3%)。
- 収益:40億ドルで予想を0.2億ドル上回る(前年比+3%)。
単位:10億ドル | 1Q20 | 1Q19 | 前年比 |
---|---|---|---|
収益 | 4.0 | 3.9 | +3% |
営業利益 | 2.2 | 2.2 | 0% |
営業利益率 | 55% | 57% | – |
純利益 | 1.7 | 1.9 | -9% |
(調整後)一株利益 | 1.83 | 1.78 | +3% |
マスターカードの投資家なら、利益も収益もともに前年+3%上昇という数字がかなり物足りなく見えるはずです。前期は利益+26%、収益+16%で成長していたことと比べても、急減速しています。
ただし、新型コロナウイルスによる景気へのダメージの深刻さを理解している人なら、むしろ+3%の業績で終われたことはかなり前向きに捉えるべきかもしれません。
新型コロナウイルスの影響
マスターカードの発表では、新型コロナウイルスによる売上の急減速は3月後半から急速にやったきたと言います。
今回の決算発表では急減速している様子をマスターカードの主要な数字(決済金額、国際決済額、処理回数)の3つを使って説明していました。
マスターカード決算用語
- 決済金額:マスターカーカードの決済ネットワークが処理した金額。
- 決済処理回数:決済ネットワークが使用された回数。
- 国際決済額:国をまたいだ決済金額。
これらの数字は、3月前半までは順調に推移していたものの3月の後半に急速に悪化しています。
1-3月の業績は利益・収益とも+3%の低成長になったと言いましたが、実は新型コロナウイルスの影響は本格的には3月の後半からの半月だけが決算に反映されていたことがわかります。
来期の4-6月期の決算では、既に少なくとも4月の1ヶ月間は業績が低迷しているので、1-3月期よりも深刻に業績が落ち込むと思われます。
Visaよりもダメージが大きい恐れ
今回の決算で、面白いなと思ったデータは「米国と米国外を比べた決済金額の推移」です。
マスターカードが発表したデータを見ると、米国は4月の中旬以降に世界の他の国先駆けて決済金額の減少に歯止めがかかっているように見えます。
この4月2週目に何があったかを振り返ると、新型コロナウイルスの経済対策でアメリカ人一人に13万円の現金給付が始まったタイミングと重なります。
米で約13万円の現金給付始まる 新型コロナ緊急経済対策(NHK, 2020年4月14日)
この緊急経済対策の効果があったのか、他の国よりも早い消費の回復を見せています。
ただ、マスターカードはライバルのVisaに比べると、この米国の消費の回復の恩恵を受けにくいかもしれません。米国での決済金額に占める割合を比較すると、マスターカードは米国依存度がVisaよりも低いからです。
決済金額比率 | 米国 | 米国外 |
---|---|---|
MasterCard | 31% | 69% |
Visa | 45% | 55% |
ただし、米国の消費の底打ちの恩恵を受けるVisaであってもすぐに「買い」かというと、そうでもありません。
>>Visa、予想を超える決算も止まらない利益成長率の鈍化【20年1-3月期決算】
上記の記事でVisaの決算記事を買いましたが、マスターカード同様に新型コロナウイルスの影響はしっかりと受けています。
もしも4-6月のVisaの業績で消費の低迷から回復の傾向がよりはっきり見えてくれば、まずVisaを買いが候補としてあがり、次にマスターカードも購入候補にするかどうか検討に入る気がします。
ただし、米国の消費の回復が4月だけの一時的なものであれば、Visaもマスターカードも購入はしばらく無しかなと考えています。