12月末から立て続けに、アメリカの経済についてブログを書いてきました。
基本的にはわからないことは調べて腹落ちしたものだけを書いているのですが、どうしても理解が追いつかずに書かなかったこともいくつかあります。
今日は「何を示唆しているのかハッキリとは分からないが、なんか良くない兆候に見えるもの」の1つである、アメリカのM2(マネーストック:市場に供給された通貨の量)について触れていきます。
M2が前年比でマイナスになった場合に、投資にどのような影響があるのかはもう少しだけ調べないとわかりませんが、今のところあまり良い印象はありません。
この記事のポイント
- M2は、ふつうは経済成長とともに増加していく。
- しかし、金融引き締めの影響で2022年11月にはM2が前年成長率ゼロ%にまで低下した。前月比ではマイナス成長を続けている。
- ただ、これが株価にどんな影響を与えるのかは、自明ではない。過去に似たような状況を探すと1993年は株価上昇、1970年は急落した。
急減速するM2の伸び
M2はふつうは右肩上がりに増えていきます。なので、前年からの成長率はどの時期をみてもプラス成長になっています。
しかし、最近は少しM2に異変が見られます。2022年の金融引き締めでM2の伸びが急速に鈍化して、11月にはついに前年比+0%にまで低下しました。
この前年比成長率は1960年以降で最低を記録しています。
また、前月比で伸びを確認すると最近数ヶ月は頻繁にマイナスの伸びが続いていることから、まもなくM2の伸びは1960年以降で初めてマイナスを記録することになりそうです。
M2と株価への影響
まもなくM2が前年比マイナスになるとして、それがどういう意味をもつのでしょうか。
一般的には「M2の伸びが低下している時に、積極的に投資をするものではない」と言われます。
確かに、M2が急減速するような(世の中のドルの総額が減ってしまうような)「景気悪化」や「急な金融引き締め」が起こっている時には、投資をするタイミングとしては適切ではない気はします。
しかし、実際にM2の伸びが大きく鈍化した過去のタイミングを見ると、株価が下落するかどうかはM2だけでは判断しかねます。
たとえば、M2が前月比で大きなマイナスを記録した1970年2月以降を見てみると、このときはS&P500が大きく下落しています。
しかし、M2が前年比でかぎりなくゼロ成長にまで落ち込んだ1995年3月の後には、株価は右肩上がりに上昇しています。
M2の伸びが急速に悪化していることは、何かしらマズイ状況が起こっていることは確かなのです。しかし、その後の株価がどうなるかは(少なくとも今の私には)M2の動きだけは判断できなさそうです。
FRB資産と株価について
M2という材料1つだけでは、今後の株価の動きを判断できないので、ここで少し材料を加えてみることにします。
次のブログ記事で書いた通り、FRBの資産額は今のS&P500と連動しているように見えます。
FRB資産と連動して下落した2022年
(※ただし、FRB資産額の中で政府預金口座とリバースレポの金額は調整する必要があります)
上のグラフのようなFRB資産額と株価の傾向が続くなら、FRBが今も続けている量的引き締めは2023年になってもしばらくはズルズルと株価を引き下げるはずです。(だいたい推定でS&P500を毎月2%の下落する力があります)
2023年になってもしばらくは株安が続きそうなことを踏まえると、今後のS&P500は1995年(上昇パターン)よりも1970年(下落パターン)に近い形になるのかも知れません。