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歴史的な規模でばらまかれたドルがかつてないスピードで回収される

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これから書くことは、何か新しい出来事についてではなく私の中で理解が追いついたという話です。

タイトルにも書いたFRBが金融政策を使って市場のドルを吸い上げるようなことは去年2022年からアメリカで見られていましたし、少し投資をやっている人ならすでに知っていることだと思います。

ただ、私はほんの少し前まで市場のドルの流通量(M2)が減ることで何が起こるのかを具体的にイメージできていませんでした。

ドルの量が減ることでどんなことに影響が出るのかが遅ればせながら少しずつ見えてきたので、2022年から続くドルの回収が何を引き起こすのかを書いていきたいと思います。

この記事のポイント

  • アメリカでは金融引き締めを続けた結果、23年2月にM2(ドルの供給量)の伸びが過去最低を記録した。
  • M2の大幅な減少は、市場からドルが急速に回収されていることを意味する。
  • ドルが減少すれば、アメリカは(1)企業の資金繰り悪化と失業率悪化、(2)銀行の預金減少で最悪の場合には破綻、(3)デフレにつながる。

ドルの供給量M2は過去最低を記録

昨日、2023年2月のM2(ドルの供給量)が発表になりました。

アメリカでは金融引き締めで世の中からドルが回収される動きが続いていますが、世の中のドルの量を表すM2はついに伸びが過去最低を記録するまでになっています。

グラフを見ると2020年は新型コロナの流行で止まった経済を蘇らせるために、FRBは大規模な金融緩和でドルを世の中に供給しましてM2は急上昇しましたが、現在は反対に歴史的な勢いで金融引き締めをしていることになります。

M2急落で起こること

私は少し前までM2の伸びが大きくマイナスに転じることで、何が起こるのか具体的なイメージが湧いていませんでした。

なので、1月の時点では「何かまずいことが起こる気はしている」という漠然とした表現にとどまっています。

>>急速に伸びが鈍化しているアメリカのM2と株価について(23年1月2日)

しかし、23年3月にいくつかの銀行が破綻したことで、遅ればせながら何が起こるのかの理解が追いついてきた感じがします。

2022年からの金融引き締め(ドルの急速な回収)が引き起こしているのは次の3つです。

  • 企業の資金繰り悪化、レイオフや倒産リスク増大。
  • 銀行は預金者に現金を引き出され、最悪の場合には破綻に追い込まれる。
  • アメリカはデフレに向かっている。

まず、ドルがバラまかれていた頃にはお金を借りることが簡単だった企業も今ではお金を借りることが難しいです。金利が上がっているので、借りる負担も大きくなっています。

すでに2月の時点で、資金力のない小規模な企業から人員を削減する動がもあり(下図)、この動きが続けば(今はまだ大丈夫ですが)いずれ景気後退につながります。

2月の民間雇用統計では小規模企業での人員削減が見られた

資金繰りで悩む企業が増えれば銀行の預金も引き出されます。また、今まではFRBのドルのバラマキで預金額を増やしていたアメリカの銀行も預金額を減らしています。

資産の含み損を確定することになっても手持ちの資産を売って現金化しないといけないほど預金が減ってしまった極端な例が、3月のシリコンバレーバンクの破綻だったと思います。

コロナの大規模緩和の逆が起こっている

ここまでの流れを大雑把にまとめると、今は2020年の大規規模な景気刺激策や金融緩和で起こったことと逆のものが起こっているように見えます。

そして、これからはインフレについても2020年から2022年に起こったものの反対の動きがこれから見られると思っています。

思い返すと2020年にはドルが市場に大量にばらまかれてM2が急上昇して、2年かけて2022年半ばにインフレのピークを引き起こしました。そのM2が今度は歴史的なスピードで減少しているなら、次は2022年半ばから2024年までかけてデフレに向かっていくと思います。

もちろん2023年3月現在でインフレの再燃を心配する声はまだありますし、まだ価格の上昇が続いているモノやサービスがあるこもとも知っています。短期的にはインフレが強まる時期もまだあるかも知れません。

ただ、やっかいなのはタイムラグです。M2が増えてからアメリカがインフレがピークをつけるまで2年のタイムラグがありました。その位のタイムラグが発生するなら、すでにやってしまった金融引き締めは2024年までアメリカを低インフレやデフレの方向に押し下げるのではないかと考えてしまいます。


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