レイ・ダリオ氏が率いる世界一のヘッジファンドのブリッジウォーターが、アメリカに「失われた10年」が到来する恐れがあると警告をしています。
>>株式投資「失われた10年」到来も、ダリオ氏のブリッジウォーター警告(ブルームバーグ)
アメリカ企業の利益成長を原動力にして米国株は何年も上昇を続けてきましたが、次の10年では利益成長が鈍化する恐れがあると見ているようです。
この記事のポイント
- ブリッジウォーターはグローバル化の効果が薄れて、今後10年は米企業の利益が鈍化すると見ている。
- 個人的にはグローバル化以外にも、米企業の膨らんだ社債が利益を圧迫すると考えている。
失われた10年が来るとブリッジウォーターが考える理由
ブリッジウォーターが次の10年でアメリカ企業の利益が鈍化すると考えている理由ですが、過去数十年の間、企業の収益性を高める最大の要因だったグローバル化の効果が薄れるためだと言います。
グローバル化とは
「グローバル化の効果ってなんぞや?」と思われるかも知れませんが、簡単に言うと世界の中で最も低コストな労働力を使って安く製品を作り、世界中の市場でできる限り多く売って利益を大きくすることです。
アップルのiPhoneを考えるとイメージしやすいかも知れません。iPhoneは中国に工場を持つフォックスコンに依頼して低コストで大量に生産し、世界中の国でできるだけ多く販売することで高い利益を上げています。
こうしたグローバル化の動きは製造業だけではなく、サービス企業でも見られます。
たとえば、アメリカのITサービス企業の多くは、インドでIT技術者をやとってコストを抑えつつITサービスの開発をしたり、フィリピンにコールセンターを設置して人件費を抑えたりしています。
この数十年間のアメリカ企業は、グローバル化の恩恵をもっとも多く受けてきました。
グローバル化の効果が薄れる理由
メリットが大きく見えるグローバル化ですが、米中の対立激化や、新型コロナウイルスが流行しても生産を続けるために、コストが高くても米国に生産拠点を作る動きがみられるとブリッジウォーターは指摘しています。
実際にインテルや台湾セミコンダクター(TSMC)はコストが高くなっても、米国内に半導体工場を建てる話を進めているようです。
私が考える失われた10年が訪れる理由
ブリッジウォーターと理由は違うのですが、私も次の10年でアメリカ企業の利益が低成長に沈む可能性があると思っています。
FRBが大規模な社債の購入などの金融緩和を続けてアメリカ企業が借金を増えた場合、利益が出ても返済に当てる金額が大きくなり、利益成長が鈍化するかも知れないと以前からこのブログで書いてきました。
また、2010年代を振り返ると税引前の企業利益は2014年に既にピークを迎えています。
それでも米国株が上昇し続けた背景には、社債で資金を調達して自社株買いを盛んに行ったことが挙げられます。結果、2019年第4四半期には過去の危機と同じ水準まで、社債が膨らんでいました。
その結果として、2019年第4四半期の時点で社債は危険なレベルまで上昇していますが、2020年は更に新型コロナウイルスの危機を乗り切るために社債が増えている動きがあり、増え続ける社債の返済で利益を圧迫する恐れがあります。
失われた10年はいくつかあるシナリオの1つ
必ずしも次の10年でアメリカ企業が低成長になると思っているわけではありません。
FRBの金融緩和よりも、米政府のお金のバラマキのほうが影響力が強ければ、低成長ではなく力強い利益成長が復活したり、バラマキの度が過ぎた場合にはインフレ率が高くなる恐れもあると思っています。
ただ、「失われた10年」はいくつかあるシナリオの一つとして警戒が必要だと思います。