アメリカの今後の調子を示す経済指標の一つに、カンファレンスボードが発表する景気先行指数があります。
去年からこのデータを見続けているのですが、どうにも景気の先行きが改善する様子が見られません。
アメリカは景気後退にはまだ陥っていないと思われますが、だからといって楽観はできないのだろうとずっと警戒しています。
この記事のポイント
- 4ヶ月連続で前月比マイナス成長が続けば景気後退のシグナルと言われる景気先行指数が、すでに19ヶ月連続でマイナスを記録している。
- それも現時点でまだアメリカに景気後退が訪れていないのは、パンデミック時の現金給付で勢いづいた余剰な貯蓄があるためと思われる。
- その余剰な貯蓄も2024年半ばにはなくなると見られる。そうなったときに景気先行指数が示すような景気後退が来る恐れはある。
低迷が続くアメリカ景気先行指数
景気先行指数という今後のアメリカの景気を占う数字が発表されました。
このデータは株価や債券価格などの市場データだけでなく、新規受注や週平均労働時間などの景気を先行するような経済データも使って、今後のアメリカ経済の先行きを数値化しています。
10月の景気先行指数は、またしても前月比でマイナス成長を記録しています。
- 予想:-0.6%
- 結果:-0.8%
上のグラフを見ていると、前月比マイナス成長がもはや珍しくもなんともないようにみえます。
しかし、一般的には3ヶ月連続で前月比マイナスになるとアメリカの景気後退に黄色信号、4ヶ月連続でマイナスを記録すると赤信号という目安があります。
米景気先行指数と景気後退
- 1959年以降、3ヶ月連続で前月比マイナスを記録した12回のうち8回で、半年以内にリセッション(67%)。
- 1959年以降、4ヶ月連続で前月比マイナスを記録した8回のうち7回で、半年以内にリセッション(88%)。
今回はすでに19ヶ月連続で景気先行指数がマイナスを記録しており、それにも関わらずアメリカが景気後退に陥っていないという珍しい状況になっています。
景気先行指数の見方
「19ヶ月も連続して景気悪化のシグナルを発しているのに、それでもアメリカは景気後退になっていないなら、景気先行指数なんて見る必要もないのではないか」とつい思いたくなります。
そうやってデータを見ないようにするのも一つの手ですが、私は「どうして今回は景気先行指数が示すような不況がまだ来ていないのか」に興味があります。
過去と違って今回はどんな特別な要因が働いているかを考えてみると、やはり真っ先に考えつくのは政府から消費者にばらまかれた巨大なお金の存在です。下のグラフで見ても、今回の政府のドルのバラマキがいかに巨大だったかがわかります。
こうした背景もあって、消費者の貯蓄は過剰に膨れ上がり、今も富裕層を中心に余分な貯蓄があると推計されています。
ですが、上のグラフを見てもわかるように着実にアメリカの人々の余分な貯蓄は失われています。
この余力が少なくなるほどに、本来訪れるはずだったアメリカの消費の不調が明らかになるのではないかと私は思っています。
そして、消費の不調から雇用が縮小し、雇用の縮小がさらなる消費の縮小を呼んで2024年にアメリカは景気後退になっても不思議ではありません。
9月にFRBの利上げが停止した後に、景気先行指数は近いうちに景気後退になるというシグナルを再び発した。高いインフレ、高い金利、(貯蓄減少と学生ローン返済の再開を背景にした)個人消費の低迷が、アメリカ経済を短期間の景気後退に陥らせると我々はみており、2024年の実質GDP成長率は+0.8%と予想する。
カンファレンスボード
景気先行指数の発表元のカンファレンスボードは、なおもアメリカの景気後退を警戒し続けています。上記のコメントにある「高いインフレ」と「高い金利」はすでにピークを打ったと思いますが、個人消費の低迷はこれから始まりそうな気配はするので、消費データの確認は引き続き注視していきたいと思います。