今年最後の景気先行指数の発表がありました。
この1年間、発表元のカンファレンスボードは景気先行指数の発表と同時に「まもなくアメリカで景気後退が訪れる」と注意喚起を続けてきました。
ついには2023年のアメリカの景気後退入りは実現しませんでしたが、カンファレンスボードを狼少年と呼ぶのも少し違う気がしています。
この記事のポイント
- 景気先行指数とその発表元のカンファレンスボードは米国で景気後退が近いことを1年以上も警告し続けている。
- 2023年12月現在でアメリカはまだ景気後退は訪れていない。景気の悪化に耐えている要因は、消費の強さにあると思われる。
- この消費の強さは余分な貯蓄がつきる2024年5月ごろまでは続くと思われる。
低迷する景気先行指数
11月のアメリカ景気先行指数が発表されました。
このデータはアメリカの景気の先行きが明るいのか暗いのかを示すものなのですが、今月も相変わらず前月比マイナスで暗い数字が続いています。
- 結果:-0.5%(予想:-0.3%)
- 前回:-0.8%から-1.0%へ下方修正
グラフを見ると分かるのですが、今回は20ヶ月連続でマイナスが続いています。これだけマイナスの状態が続くのは2007年から2008年にかけての世界金融危機以来だそうです。
景気先行指数の発表元のカンファレンスボードは景気先行指数の6か月間成長率を見て、アメリカの景気後退の警告を出すかを判断しています(下図)。今回はもうかれこれ1年以上も景気後退シグナルを出し続けていることになります。
アメリカでは足元の景気指数が回復し、12月の消費者信頼感も改善していますが、景気先行指数は今後の経済活動が下振れすることを示しています。よって、カンファレンスボードは2024年前半にアメリカ経済が短く浅い景気後退におちいると予想します。
カンファレンスボード
カンファレンスボードの予想を裏切っているもの
カンファレンスボードは1年も前からアメリカの景気後退を予想し続けてきましたが、2023年12月時点でアメリカはまだ景気後退に陥っていません。
「じゃあ、カンファレンスボードや景気先行指数はもう見なくてもいいのではないか」と思われても仕方ないくらいですが、大事なのはどうして今まで景気後退を当ててきたアメリカの景気先行指数が、今回はまだ当たっていないのかです。
カンファレンスも指摘していましたが、経済指標や市場データを眺めると11月はことごとく先行きを示すデータ(製造業新規受注や建築許可数など)が悪かったです。景気先行指数の算出に使っている10種類のデータのうち、11月で良かったものは株価しかありませんでした。
こうした数字を見ていると、アメリカ経済は既にたいぶ危うくなっているのに、まだまだ持ちこたえているという印象を受けます。
持ちこたえてる一番の要因は、このブログでは何度も行っていますがやはり消費と雇用の強さだと思うのです。
コロナ流行時にためた余分な貯蓄がまだ残っているうちは、そう簡単に消費が崩れるとは思えません。一部の消費者は貯蓄が底をついて低所得層を中心にクレジットカードの延滞率も上がっていますが、まだ余裕のある層が一定数いるために消費を支えていると思われます。
上のグラフを見ると、余分な消費がつきるのは2024年5月です。この頃になれば消費の余力もだいぶ奪われて、景気先行指数が示すようなアメリカの減速が見られるのではないかと思っています。