アメリカは経済成長率が悪化しても小幅で済むという予想や、失業率はほどんと悪化しないというソフトランディングを予想する人が増えています。
中には「景気後退は訪れない」とノーランディングを予想する声もあります。
ここではアメリカ経済の先行きを示す景気先行指数を見ていきますが、確かに最近はこの数字もマイナス幅が縮小しているように見えます。
この記事のポイント
- アメリカの景気先行指数は21ヶ月連続で前月比マイナスを記録した。
- 景気先行指数のマイナスはアメリカの景気後退を予兆しているはずだが、まだ訪れていない。
- 個人的にはアメリカの景気後退は到来が遅れているだけだと思っている。コロナ流行時の余剰貯蓄が景気後退が遅れた原因なら、それが尽きてからも景気後退が回避できるかは疑問。
21ヶ月連続でマイナスが続くアメリカ景気先行指数
12月のアメリカの景気先行指数が発表になりました。
- 予想:前月比-0.4%
- 結果:前月比-0.1%
この数字は前月比でマイナスなら景気の先行きが悪いことを示します。もっと簡単に言うと、この先どこかで景気後退になりうるという意味です。
通常、景気先行指数が悪化してから半年から1年くらいでアメリカの景気後退期が訪れているのですが、今回はまだまだ訪れていません。
毎月そう言っているうちに、景気先行指数の前月比は今回で21ヶ月連続になりました。
しかし、実際にはいつになってもアメリカの景気後退は訪れる気配がありません。
そして上のグラフを見ると、最近では前月比のマイナス幅が少しずつ縮小して回復に向かっているような印象すらあります。
ソフトランディング派からすると、先週発表された新規失業保険申請件数の低水準に加えて、先行指数まで回復に向かいつつあるなら、願ったり叶ったりの展開です。
カンファレンスボードの見解
アメリカの景気後退を予想している派には苦しい展開が続いていますが、景気先行指数の発表元のカンファレンスボードはこの状況に対して今でも、アメリカの景気後退は第2四半期と第3四半期に訪れるだろうと予想しています。
景気先行指数は前月比のマイナス幅が縮小し、半年前比や前年比で見てもグラフは上向きに変わっているがまだマイナス圏に留まっており、この先に景気後退のリスクが存在することを示し続けている。カンファレンスボードは、第2四半期と第3四半期にアメリカ経済がマイナス成長に転落して、2024年後半にかけて回復が始まると予想している。
いつもと違うアメリカ経済
カンファレンスボードは上記のように言ってはいますが、この予想はこの1年ほど繰り下げ続けている点には注意が必要です。
現時点の消費の強さや失業率の低さを考えると、第2四半期からアメリカの景気後退が始まるのは少し難しいかもしれません。
ただ、景気先行指数は過去の数多くの景気後退期を的確に当ててきた指標です。今回だけ根拠なく「いつもと違う」と考えるのは、違う気がします。
もしも、コロナ流行初期の給付金で家計に余裕があったから強い金融引き締めにも耐えられたという「いつもと違う」事情があって景気後退にならなかったなら、その家計の余裕がどこまで持つかを気にする必要があります。
だからこそ、このブログでは半年ほど前からコロナで蓄えた余剰貯蓄の額を追跡してきたわけですが、あと数ヶ月で余剰貯蓄を使い切るところまで来ています。
だから、私はまだアメリカの景気後退は到来が遅れているだけで、やがてやってくるものだと思っています。
また、今週発表の10-12月のアメリカGDP成長率はおそらく好調な数字が出て、そこでもアメリカ経済のソフトランディング派が勢いづくと思われますが、貯蓄の議論が正しいなら消費が落ちるのは2024年後半だと思われるので、まだソフトランディングと決め打つのは早いだろうとも思います。