「2020年は株が絶好調なのに、まだリセッションとか景気後退という記事を書いているのか」と思われるかもしれません。
株価は連日最高値を更新して絶好調なのは私も知っています。ただ、経済指標を見るとどうしても結果が良くないのです。経済と株が別々の動きをしているように見えます。
このブログでは何度も取り上げていますが、アメリカの今後の景気の動向を示す景気先行指標(LEI)が、どうも不穏な動きをしています。2019年12月も前月比でマイナスに落ち込み、これでついに前年比でもマイナス圏内に突入しました。
この記事のポイント
- アメリカのLEIは悪化した。前月比-0.3%と予想を下回る結果になった。
- 債権王のガンドラック氏は、景気後退前にはLEIが前年比でマイナスになることに注目していて、今回でそのシグナルが点灯した模様。
- 注目は2020年後半。経済学者が予想するように2020年後半からアメリカの景気が上向くのか、それとも指標が示すように景気後退に向かうのか分かれ道がやってくる。
アメリカ景気先行指標LEIとは
景気先行指標(LEI)はコンファレンスボードという団体が集計している今後のアメリカの景気を占う数字です。
1959年から算出している歴史あるもので、普通ならこの数字は右肩上がりでプラス成長を続けるのですが、景気が悪くなる前にはピークをつけて下がっていくことが知られています。
以下のグラフでは、LEIが落ち込んだあとにちゃんと景気後退(グレーで色付けされている年)が訪れていることがわかります。
出典:『Advisor Perspectives』
LEIはアメリカの景気の今後を見る重要な指標の一つになっています。
アメリカ景気先行指標が悪化
LEIの2019年12月の結果が発表されました。予想は前月比マイナス0.2%と悲観的でしたが、結果がもう少し悪くマイナス0.3%でした。
2019年12月アメリカ景気先行指標
- 予想:マイナス0.2%
- 結果:予想を下回るマイナス0.3%
- 前回値修正:0%からプラス0.1%に上方修正
この景気先行指標は製造業の影響を強く受けるので、低迷する製造業と歩調をあわせてLEIも悪化しているようです。
LEI4ヶ月連続マイナスを回避
まず、良い面からお話します。前月のデータが0%から0.1%に上方修正されたのはニュースでした。
もしもマイナスに下方修正されてしまった場合はLEIは4ヶ月連続のマイナスを記録し、かなりの高確率で景気後退が近いこと意味していましたが、そうはなりませんでした。
どういうことか説明します。
世界的に有名なグッゲンハイム・パートナーズという運用会社のCIO(最高投資責任者)のスコット・マイナード氏は、LEIに注目している一人で、もしも4ヶ月連続でLEIが悪化した場合には過去88%の高確率で半年以内に景気後退(リセッション)が起こると指定していました。
…(2) Since 1959, the U.S. has only seen 4 consecutive negative #LEI prints 8 times. When this happens, a #recession has occurred within 6 months 7 out of 8 times. Investors must closely watch December’s numbers for their significance.
— Scott Minerd (@ScottMinerd) November 21, 2019
マイナード氏のコメント
- 19年11月発表(19年10月分)のLEIは3ヶ月連続で下落した。リセッションの黄色信号が点灯した。
- 1959年以降、3ヶ月連続でLEIが下落した11回のうち7回は半年以内にリセッション(64%)。
- もしも4ヶ月連続で下落すれば、8回中7回の高確率で半年以内にリセッション(88%)。
今回発表された2019年11月分のLEIは上方修正されたので、88%でリセッション入りする4ヶ月連続のLEIマイナスの事態は免れました。
景気先行指標 | 前月比 |
---|---|
2019年8月 | -0.20% |
2019年9月 | -0.20% |
2019年10月 | -0.20% |
2019年11月 | 0.10% |
2019年12月 | -0.30% |
ただし、3ヶ月連続でLEI前月比マイナスは達成しているので、過去データによれば半年以内に確率で64%で景気後退するようです。
LEI前年比でもマイナスへ
上の表を見ても直近数ヶ月のLEIが冴えないのはわかると思います。5ヶ月中4ヶ月で前月比マイナスです。最近のLEIの低迷で、ついには前年比で見た場合でもLEIがマイナス成長に突入した模様です。
出典:『ウェルズ・ファーゴ』
債権王のガンドラック氏は、景気後退前にはLEIが前年比でマイナスになっていることに注目していると発言していますが、ついにこのシグナルが点灯したことになります。
もちろん、95年のようにLEIが前年比でマイナスになっても景気後退が訪れないケースもあります。また、LEIは3年おきに好不調を繰り返しているので、2020年に無事に景気後退を回避できれば2023年まで景気拡大期が続く可能性もあります。
蛇足ですが、約3年のサイクルは一般的な製造業の在庫サイクル40ヶ月とも近い動きです。このあたりでも、LEIが製造業に強く影響を受けていることがわかります。
まとめ
今後の景気後退を占うLEIが前年比でマイナスに落ち込み、景気後退をうっすらと感じさせています。
市場はかなり強気な姿勢が強いですが、逆イールド現象やLEIなど定評ある指標が景気後退が近いことを示している点には注意をしたほうが良さそうです。
>>2020年夏に米景気後退か。ニューヨーク連銀の予測モデルが警告。
注目するのは2020年後半です。多くの経済学者は2020年半ばまでアメリカの景気減速が続いた後に、底を打って成長が加速すると予想しています。
反対に、経済指標(LEI)や金利(逆イールド現象)は2020年後半以降に景気後退が来ると言っています。どちらが正しいのかは、今後の投資成績をかなり左右すると思います。