2023年にアメリカは景気後退に陥るとして、その後に再び高いインフレに見舞われるのでしょうか。
もしも、インフレの第2波に襲われるなら次の景気後退期にはコモディティ、石油株、米REIT(アメリカの不動産投資信託)を買っておくなど選択肢も変わりそうです。
この記事では、再びインフレが過熱するかどうかの判断材料を書いておきたいと思います。
この記事のポイント
- 1970年前後のアメリカでは3度のインフレに見舞われた。
- 賃金上昇率が年率5%を下回ることが出来ない場合には、インフレは再燃した。
- 今後2020年代でインフレが再燃するかどうかは、賃金上昇率5%が一つの鍵になりそう。
3度のインフレに見舞われた1970年代
よく知られている事実ですが、1970年代のアメリカは3回のインフレに見舞われています。
この上の図を見て、「今回も2020年代に3回のインフレがやってくる」と言うのは、少し短絡的すぎるとかも知れません。
疑問なのはどうして1970年代のインフレは1回目や2回目では収まらず、3回目では収まったのかです。
というわけで、1回目や2回目のインフレ期には見られず、3回目にだけ起こったデータの変化を探してみたいと思います。
賃金上昇が収まった3回目のインフレ
よく言われるのは、3回目の1980年のインフレ期では当時のFRB議長のボルカー氏が強い金融引き締めを行って、インフレを沈静化できたという話です。
金融引き締めの結果、インフレを起こした原因と言われている賃金の上昇を食い止めたという文脈で、1970年代のインフレと賃金の上昇の関係を調べていきたいと思います。
次のグラフは、1960年代後半からの「消費者物価(青)」と「製造業・非管理職の賃金上昇率(赤)*」グラフにしたものです。
※現在、投資家が毎月確認している雇用統計の平均時給は2006年からしかデータがないので、「製造業・非管理職の賃金上昇率」で代用しています。
上のグラフを見てみると、どうも金融引き締めの結果で「賃金上昇が5%を下回るまで抑え込むことができたかどうか」が鍵になりそうです。
1回目1970年のインフレの後、2回目の1974年のインフレの後には、いずれも賃金上昇率は5%まで下がらずに再び上昇に転じました。
しかし、3回目の1980年にピークをつけたインフレでは、賃金上昇率が5%を下回るまで下がっています。その後には、インフレは再燃することはありませんでした。
さて、ひるがえって2022年10月のアメリカの賃金上昇はどのようになっているでしょうか。
現時点では賃金上昇率は緩やかに低下していて5.5%にまで低下しています。このままのペースで低下を続け、景気後退時の金融緩和後でも5%の賃金上昇が起こらなければ、インフレの再燃はないかもしれません。
インフレの再燃は約束された未来ではなさそうなので、注意深くデータを眺めてインフレ向け投資の必要があるかどうかを判断したいと思います。