昨日発表された経済指標の中に、明るいニュースがあったので取り上げたいと思います。
アメリカの8月の求人件数が急激に減少しているというものです。(求人件数のデータは発表が遅いので、8月分がようやく10月の今に発表されています。)
この記事のポイント
- 8月のアメリカの求人件数は大きな減少が起こった。
- 人手不足の賃金上昇がインフレを加速させていた現象は既に峠を超えた。インフレの収束にまた一つ良い兆候が見られた。
- ただし、恐らく痛みも伴う。求人の急減速は景気の悪化も示唆しているため、株は短期で上昇しても利益減少でいずれ下落する。今後の投資は国債かゴールドが選択肢になりうる。
急減したアメリカの求人件数
既に冒頭でも書きましたが、8月にアメリカの求人件数は大きく減少したようです。
通常なら求人件数が急減少している場合には、企業が採用を絞ったり止めたりしていることを意味するので、企業景気悪化の前兆で悪いものとされます。
しかし、インフレで悩んでいた2022年のアメリカにとっては悪い知らせばかりではありません。
上のグラフを見ても分かるように新型コロナの流行して以来、アメリカの求人件数は大きく上昇して人手不足の状態が続いていました。
2022年のアメリカは人手不足で賃金が高騰してインフレを焚き付けていたのですが、人手不足が解消に向かって賃金上昇によるインフレ上昇が収まる気配を感じます。
次のグラフは失業者一人に対してどれだけの求人数があるかをグラフ化したものですが、これを見ると既に人手不足はピークをつけて解消に向かっていることがわかります。
人手不足のピーク超えはインフレの収束を目指しているFRBにとっても、FRBに早く金融引締を止めてもらいたい投資家にとっても良いニュースだと思います。
米国債とゴールドにチャンスの兆し
この求人数の急減のニュースをどう捉えるかですが、私は米国株よりも米国債やゴールドに投資のチャンスの兆しが見え始めたと思っています。
忘れてはいけないのは、求人数の急減が意味するものは「インフレ圧力の減少」だけでなく、「景気の鈍化や悪化」も示していることです。
株は企業業績の影響を受けるので、これから景気が悪化するなら今から株を買いに行くのは難しい選択になると思います。
米国株は昨日も大きく上がっていますが恐らく短期的なもので、長くても上昇は1-2ヶ月で終わると思います。アメリカの景気まだまだ底を打っていないと思っているので、これから数ヶ月で企業の利益見通しが下がって株価下落が起こる恐れがあります。
- 米国株:インフレ低下と金融引締終了の期待で短期的に上がりやすいが、景気悪化で株価下落の恐れあり。
- 長期国債:今後はインフレよりも景気悪化が投資家の懸念材料になるなら、価格は上昇する(長期金利は低下)。
- ゴールド:(実質)長期金利が低下すればゴールドの価格は上昇する。一方で、株のように業績悪化のマイナス材料はない。
一方で、国債やゴールドは株と違って価値の評価に企業の業績には関係ありません。
もしも、インフレ圧力低下と金融引き締めの終わりを意識するなら、長期国債やゴールドが今後の投資の選択肢に上がってくると思います。