少し前のことになりますが、先週ジョンソン&ジョンソンの2022年1-3月期の決算が発表されたので触れておきたいと思います。
少し前の決算から少し疲れのようなものが見え隠れしています。
おそらくジョンソン&ジョンソンの株を保有する投資家は長期投資目線の人が多いと思うので、特に気にせずに長期目線で見ていれば良いとも思うのですが、株価は好調でも今はそれほど追加投資しなくて良い時期に見えます。
この記事のポイント
- 一株利益は予想を超えたが、売上は予想に届かなかった。これで売上が予想を下回る決算が3回続いた。
- 売上が伸び悩んだ原因は、「今まで好調だった医薬品の売上成長率が鈍化したこと」と「日用品の売上が前年比マイナスに沈んだこと」
- 医薬品は1月のアメリカでのコロナ流行時に処方数が伸びなかったことが低迷理由で、おそらく一時的。しかし、日用品は原材料が確保できていない供給の問題を含むので次回決算も心配。
3回連続で予想を下回る売上
まずは、ジョンソン&ジョンソンの業績を確認していきます。一株利益はちゃんと予想を超えましたが、売上は予想を下回りました。
- 一株利益:$2.67(予想$2.58)
- 売上:$23.4B($23.6B)
最近は株価もそこそこ好調なのであまり投資家は心配していないのかも知れませんが、3回連続でジョンソン&ジョンソンは売上が予想に届いていないようです。
毎回当たり前のように予想を超える決算を続けてきた少し前の頃に比べると、最近は調子を落としているように見えます。
売上や一株利益の成長率を見ても、成長率の鈍化が見られます。
伸び悩んだ医薬品と日用品
成長率の鈍化が見られているジョンソン&ジョンソンですが、この原因はどこあるのでしょうか。
調べてみると、「好調だった医薬品セグメントの伸びが鈍化したこと」に加えて、「供給の問題に苦しむ日用品セグメントの売上低迷」という2つが見られます。
詳しい数字を見る前に、ジョンソン&ジョンソンは次の3つのセグメントをおさらいしておきます。
- 日用品(市販薬含む):ドクターシーラボ(美容品)、ニュートロジーナ(ハンドクリーム)、タイレノール(解熱鎮痛剤)
- 医薬品:レミケード(関節リウマチ治薬)、ダラザレックス(多発性骨髄腫薬)、イブルチニブ(抗がん剤)
- 医療機器・備品:アキュビュー(コンタクトレンズ)、不整脈診断システム、外科手術用品、消毒洗浄用品
このうち売上規模が最も大きいのは、売上比率で55%を占める医薬品です。
単位:10億ドル | 売上 | 構成比 | 前年比 |
---|---|---|---|
日用品 | $3.6B | 15% | -2% |
医薬品 | $12.9B | 55% | +6% |
医療機器 | $7.0B | 30% | +6% |
合計 | $23.4B | 100% | +5% |
売上規模の大きい医薬品が好調だった去年までは、ジョンソン&ジョンソンは安定して好業績を残せていたのですが、最新の決算ではこの売上成長率に鈍化傾向が見られます。
以下で、四半期ごとのセグメント別の売上成長率をグラフ化しましたが、医薬品(紫の線)は前回決算の+17%成長から+6%に成長が減速しています。
(※上のグラフを見ると医療機器(黄色線)が最も売上成長が鈍化しているように見えますが、コロナ流行初期の売上激減の反動で2021年の前年比成長率がとても大きかっためにそう見えるだけです。むしろ今期の医療機器は前期よりも成長率が加速しています。)
医薬品の売上成長率鈍化と聞くと、「新型コロナウイルスのワクチンの売上が減ったからかな」と考える人もいるかも知れませんが、ワクチンの売上は医薬品部門の4%にもならないのでそれほど影響はありません。また、たしかにアメリカだけでのワクチン売上は前年から25%下がっていますが、世界ではワクチンの売上は前年比4倍で伸びていました。
決算報告でCEOの聞いていると、新型コロナウイルスがアメリカで最も感染者数が多くなった22年1月に(コロナ以外で病院に行く人が少なかったためか)医薬品の処方数が伸び悩んだそうで、これが不調の原因のようです。2月と3月には持ち直したと言います。
医薬品の売上鈍化が一時的なものなのかどうかは、次の決算でも確認してみようと思います。
また、日用品の売上成長率が前年を下回っている点も少し気がかりです。CEOの話では、美容や肌ケア用品などの一部商品の原材料やパッケージ材料が確保できずに、売上が伸び悩んだと言います。
供給の問題は一時期ほど世間では騒がれなくなりましたが、個別の企業や製品では売上に悪影響が出ているようです。
さいごに
この記事では、ジョンソン&ジョンソンの2022年1-3月期の決算を見ていきました。
2022年の米国株はズルズルと下がる低調な状態が続いている中で、医薬品株は善戦しています。しかし、ジョンソン&ジョンソンの個別の決算を見てみると、今期に関してはあまり良い業績ではありませんでした。
上にも書きましたが、売上規模の大きい医薬品の成長率がちゃんと持ち治せるのかは次回の決算でも確認していきたいと思います。