2020年7-9月期の決算シーズンの先陣を切る形で、ジョンソン&ジョンソンの決算発表がありました。
業績は予想以上によかったのですが、新型コロナウイルスのワクチンの最終試験で体調不調になった参加者が見つかり、試験が一時中断したとのニュースを受けて、この日の株価は下げてしまっています。
この記事のポイント
- 7-9月期は一株利益・収益ともにアナリストの事前予想を上回る結果をあげた。また、2020年通期の業績も予想を引き上げる好決算だった。
- 予想以上の決算につながった要因は、新型コロナウイルスで売上が大きく落ち込んでいた医療機器部門で、業績の回復の傾向が見られたこと。
- しかし、新型コロナウイルスのワクチンの最終試験の最中に原因不明の病が見られて試験が中断したニュースが報じられて、好決算にも関わらず株価は下げた。
ワクチン試験の一時中断は残念なニュースですが、そもそもジョンソン&ジョンソンは新型コロナウイルスのワクチンで儲ける意思はないと表明しているので、このニュースが業績に与える影響は限定的です。
それよりも新型コロナウイルスの売上低迷から回復の兆候が見られているのは、良い傾向だなと感じました。
20年7-9月期は予想を超えの決算
ジョンソン&ジョンソンの2020年7-9月期の決算を見ていきます。
- (調整後)一株利益:$2.20で、予想を$0.22上回る(前年比+3.5%)。
- 収益:$21.08Bで、予想を$0.93B上回る。(前年比+1.7%)
単位:10億ドル | 3Q20 | 前年比 |
---|---|---|
収益 | 21.1 | 1.7% |
(調整後)純利益 | 5.9 | 3.5% |
(調整後)一株利益 | 2.2 | 3.8% |
この会社は、成長率こそ高くないものの本当に業績が安定しています。過去数年の決算を見返しても、めったなことではアナリスト予想を下回りません。
前期(4-6月期)は新型コロナウイルスで売上が前年を下回ってしまいましたが、今期はわずかながら前年を上回りました。コロナの売上低迷からは復調をしているようにみえます。
引き上げられた2020年通期予想
良かったのは7-9月期の業績だけではありません。今期の決算で2020年の業績予想も引き上げられ、アナリスト予想を超える内容が発表されました。
- 収益見通し:$79.9B-81.4Bから$81.2B-82.0Bへ引き上げ(アナリスト予想$80.66Bを上回る。).
- 一株利益見通し:$7.75-7.95から$7.95-8.05へ引き上げ(アナリスト予想$7.89を上回る。)
予想以上の業績見通しを受けて、今後はジョンソン&ジョンソンの株価が上方に見直されやすくなると思われます。
部門別業績
ここからは、ジョンソン&ジョンソンの売上を部門別にもう少しだけ分解してみてみます。
ジョンソン&ジョンソンの部門
- 日用品:ドクターシーラボ(美容品)、ニュートロジーナ(ハンドクリーム)、タイレノール(解熱鎮痛剤)
- 医薬品:レミケード(関節リウマチ治薬)、ダラザレックス(多発性骨髄腫薬)、イブルチニブ(抗がん剤)
- 医療機器・備品:アキュビュー(コンタクトレンズ)、不整脈診断システム、外科手術用品、消毒洗浄用品
単位:10億ドル | 売上 | 構成比 | 前年比 |
---|---|---|---|
日用品 | 3.5 | 17% | 1.2% |
医薬品 | 11.4 | 54% | 5.0% |
医療機器 | 6.2 | 29% | -3.7% |
合計 | 21.1 | 100% | 1.7% |
ジョンソン&ジョンソンは3つの売上部門を持っていますが、この中でも「医薬品」は新型コロナウイルスでも安定した業績を見せ、反対に「医療機器」は前期は売上が約35%減るなど、大きな痛手を被っていました。
しかし、この課題だった「医療機器部門」にも回復の兆候が見られています。
直近4四半期ごとの部門別の売上成長率をグラフ化してみると、新型コロナウイルスの影響を受けていた20年1Q(1-3月期)と2Q(4-6月期)の低迷からかなり回復しているようです。
まだコロナ以前の成長率にまでは回復していませんが、かなりの良いペースで復調しているようです。
新型コロナウイルスのワクチン最終試験は一時中断
ただし、今回は好決算にも関わらず、ジョンソン&ジョンソンの株価は売られてしまいました。
この日の市場は好決算ではなく、ジョンソン&ジョンソンが開発している新形コロナウイルスのワクチンの試験が中断してしまうニュースに反応したものと思われます。
ジョンソン&ジョンソンは6万人を対象にワクチンの最終試験を既に行っていたのですが、試験の参加者に原因不明の病気が見られたことで、試験を一時中断したようです。
>>J&Jのコロナワクチン臨床試験中断、参加者が原因不明の病気(ブルームバーグ)
ただし、ワクチン開発でこうした中断はそれほど珍しいものではないようです。
9月には同じく新型コロナウイルスのワクチンを開発しているアストラゼネカ社の試験でも、一時的に試験が中断しました。
アストラゼネカの場合、イギリスなどのいくつかの国では既に試験を再開したようなので、ジョンソン&ジョンソンも中断は一時的でまた早く再開してくれることを期待しています。
さいごに
この記事では、ジョンソン&ジョンソンの7-9月決算を見ていきました。
コロナで沈んだ医療機器部門の業績も回復を見せていて、予想超えの好決算でしたが、ワクチン最終試験の中断のニュースと重なってしまったため、株価は下落してしまいました。
ただし、ワクチンの試験で中断するのは珍しくない上に、ジョンソン&ジョンソンはワクチンで大きく稼ぐようなことは考えていないと前から宣言しているため、仮にワクチンが完全にストップしてしまったとしても大きなダメージは負わないと思われます。
今回の決算も悪くなかったですし、ジョンソン&ジョンソンは特に割高には見えない株なので、市場平均と同程度の安定したリターンと毎年増え続ける配当金を楽しみにしたい投資家にはオススメの銘柄です。