アラン・グリーンスパンという方をご存知でしょうか。1987年から2006年まで、約20年にも渡ってFRB議長を務めた人です。
2019年8月に30年国債利回りが過去最低を記録したことは前の記事で書きましたが、これを書いている時に頭によぎったのは元FRB議長のアラン・グリーンスパン氏の発言でした。
グリーンスパン元連邦準備制度理事会(FRB)議長は、米国債の利回りがマイナスにまで低下しても驚かないだろうと語った。そうなったとしても、大したことではないとの見方だ。
グリーンスパン氏(93)は電話インタビューで「債券市場では国際的な裁定取引が進行中で、それが米長期債利回りの低下を後押ししている」と指摘。「米国債利回りがゼロ以下になるのを妨げるものは何もない。ゼロは何の意味も持たない」と述べた。
グリーンスパン氏、米国債利回りのマイナス化を阻止するものない(ブルームバーグ)
過去最低利回りは何の意味も持たない数字だった
アラン・グリーンスパン氏の発言は当たるかも知れません。
実際、30年国債の利回り歴代最低値の2.0889%を下回るときも、下値を試すような恐る恐るとした下落ではなく、あっさりと何事もなかったかのように記録を更新していきました。
これだけアメリカの国債が買われて利回りが下がる理由には、そもそも世界の景気後退懸念で投資家の資金が国債に向かっていること、さらに国債の中ではアメリカ国債の利回りは圧倒的に高くて魅力的に見えていることがあります。
具体的にはドイツ10年国債利回りマイナス0.653%、フランス10年国債利回りマイナス0.374%、日本10年国債利回りはマイナス0.218%ですが、これらに比べたらアメリカの10年国債は+1.596%と他の国と比べて圧倒的に高い利回りが確保できます。
30年国債利回りが過去最低水準に近づいたとしても、他の先進国の利回りが大きくマイナスになっていることに比べたらアメリカはまだ高い利回りを維持していると見えて、どんどん買わた結果、アメリカの長期国債の低金利化が記録的な低水準にまで進んでいます。
この延長で考えた時、今後いずれアメリカの10年国債の金利がゼロに近づくようなことがあったとしても、その数字は未だに他の国から比べたら利回りが良いので、マイナスの金利を試すような動きではなく、またしてもあっさりとマイナス金利に突入することも考えられます。
アラン・グリーンスパン氏は言った「米国債利回りがゼロ以下になるのを妨げるものは何もない。ゼロは何の意味も持たない」は、そう遠くない日に起こり得る事かもしれません。