4月もアメリカ企業の景気は良かったようです。
先日アメリカ企業の製造業の景気は4月も好調だったという記事を書きましたが、製造業だけでなくサービス業も4月は好調だったようです。
この記事では、ISMによる米国のサービス業の景気レポート(4月分)の結果を軽く取り上げながら、4月の製造業とサービス業の動きからわかること、考えられることを書いていきます。
この記事のポイント
- 米国サービス業の景気は最高値を記録した3月から下落も、好調を維持した。
- 下落した原因は景気がピークをつけたからではなく、十分な人材を確保できなかったことでサービス提供が満足にできていないためと思われる。
- アメリカでは製造業・サービス業ともに需要は強いが、企業が十分な供給を出来ていない。インフレ率の上昇を招きやすい状況にある。
- インフレ率上昇が続くようなら、投資家は量的緩和の縮小を予想し始める。今後はインフレ率の行方に注目が集まる。
好調だった4月のサービス業の景気
4月のアメリカのサービス業の景況感(どれくらい景気が強いと感じているか)が、ISMという組織から発表されました。
結果はかなり良かったです。過去最高値を記録した3月に比べると、1%ポイント下げてしまいましたが、それでも引き続き好調をキープしているようです。
50を超えていれば景気拡大を意味するのですが、4月は60を超えているのでかなり強い景気だったようです。
3月から下落した理由は人材不足
4月は3月から下げたと言っても、すぐに景気はピークを超えたと判断するのは早いかもしれません。
企業を調査したISMによれば、4月は人材不足になっていなければ、もっと景気がよくなっていたはずだと言っているからです。
ホテルやレストランでは人材の確保に苦労しているというコメントが寄せられており、建築業界でも労働力が不足して仕事の受注を絞っていると言います。
「入荷遅延(Supplier Deliveries Index)」という項目は50を超えると入荷の遅れが増えている(サービスへの需要が増えている&景気が改善している)ことを意味するのですが、4月は3月よりも大きな値を記録しています。
項目 | 4月 | 3月 | 前月比 |
---|---|---|---|
入荷遅延 | 66.1 | 61.0 | +5.1ポイント |
これはアメリカの景気が良くなり、サービス業全体への需要が強まっていることを意味します。
インフレ率上昇が懸念
4月のサービス業の景気は3月よりも下がりましたが、これは人材不足によるもので、サービスを欲しがる需要は十分に強いことがわかりました。
この状態で心配なのは、やはりインフレ率を上昇です。需要が強く、多少価格が高くてもサービスを受けたがる人が多いなら、物価は上がりやすくなります。
先日の4月の製造業の景気の記事でも書きましたが、製造業でも需要は強いのに原材料の確保が困難で生産が追いつかず、インフレ率が上昇しやすい状況にあります。
つまり、4月のアメリカ企業の景気を見ていると、今のアメリカは製造業もサービス業もインフレ率上昇を招きやすい環境になっていることがわかります。
インフレ率上昇で心配なのは、金融緩和の縮小
こうした中、投資家の多くは今後のインフレ率予想を引き上げています。
債権投資家の長期のインフレ率予想(10年国債の期待インフレ率)も2021年になってから、スルスルと上昇を続けています。
インフレ率は高すぎて、低すぎても景気に悪影響を与えるので、2%前後が適温と言われています。
5月5日現在は2.47%でまだ健全と言える範囲ですが、この予想インフレ率が3%を超えると投資家のインフレへの警戒心は一段と強まる気がします。
そのタイミングは早ければ、今後数ヶ月にも訪れるかも知れません。
インフレ率が上昇することの問題点
予想インフレ率が2%台で安定すれば良いですが、そうならない場合、多くの投資家は「インフレを抑えるためにアメリカの中央銀行のFRBは金融緩和の縮小を始めるのではないか」と予想を始めるはずです。
2020年から米国株は大規模な金融緩和のおかげで株高になったので、金融緩和の縮小は株価にとってマイナスです。
ただ、通常金融緩和の縮小はすぐには効果が出ません。過去の動きを見てみると、量的緩和(債権購入)を縮小しても株価は大崩れはしないどころか、政策金利を引き上げても半年から1年程度は上昇が続いていることも多いです。
なので、まだしばらくは米国株に投資して良い時期だと思っていますが、もしもインフレ率の上昇が続くようなら警戒を強めて、少しずつ早めに守りの投資にシフトしても良いと思ってます。