11月のアメリカの製造業の景気は悪化に転じたという話を先日書きました。
>>アメリカ製造業の景気、ついに悪化を示す【ISM製造指数】
それから数日遅れでISMはサービス業の景気も発表したのですが、こちらは予想外に上昇していました。
今のインフレを長引かせないためには、アメリカは景気後退をしてでもインフレを早々に退治する必要があると私は考えているのですが、なかなかアメリカの景気はしぶといようです。
この記事のポイント
- ISMが発表した11月のサービス業の景気は予想を上回って、前月から景気拡大の加速を示した。
- 景気がまだ強いことが意識されたのか、投資家による政策金利予想はわずかに引き上げられ、株も債券も売られた。
予想外に強かったアメリカサービス業の11月の景気
ISMが発表した11月のサービス業の景気の強さ(景況指数)を確認していきます。
- 予想:53.4
- 結果:56.5(前回54.4)
この数字は50を超えると、景気拡大をしていることを示します。今月も50超えなので、アメリカのサービス業が11月は景気拡大を続けた模様です。
また結果は予想を上回っただけではなく、前回の数字も上回って景気拡大のスピードが増していることも分かりました。
投資家の間では11月は随分と景気後退が話題にのぼり、そのとおりに製造業の景気は11月に悪化を示したのですが、一方でサービス業はまだ堅調なようです。
上のグラフを見るとわかるように、全体としては景気拡大のペースは落ちてきてはいます。しかし、この数ヶ月はしぶとく下げ止まっているように見えます。
政策金利予想はふたたび上昇
既にここまでの記事のトーンでおわかりかもしれませんが、私はサービス業の景気が強い状態は歓迎していません。
サービス業の景気が長続きするほど、FRBが政策金利をさらに引き上げないといけない展開になる恐れがあるからです。2022年に既に経験したように金利の引き上げはダラダラとした株安と債券安を引き起こします。
先週発表された求人数を見ても、雇用者数の増減を見ても、大きく雇用を押し上げているのは「レジャー・ホスピタリティ」と「ヘルスケア・ソーシャルアシスタント」で、どちらもサービス業です。
インフレを退治したいFRBとしては、政策金利を引き上げて景気減速を起こして雇用(賃金上昇)を抑えたかったのですが、この数ヶ月は景気が冷え込んでいる様子が見られません。なので、FRBによるさらなる政策金利の引き上げがあるかもしれません。
投資家も同じようなことを考えたのか、ISMのサービス業の景況指数が発表されてから、投資家の政策金利予想もわずかに引き上げられています。
そして、その影響を受けたのか昨日の米国株も調子はよくありませんでした。
通常の景気後退が来るなら国債でもゴールドでも資産を守る手段はあるのですが、政策金利の引き上げとなると対策は現金化などいくつかに限られます。
個人的には、景気後退でも良いので早くインフレ(賃金上昇)が収まってくれることを望んでいるのですが、まだハッキリとした兆候が見られないので、2023年の前半は政策金利5.0-5.25%を超える展開も起こりうるかもしれないという考えがこの数日で頭をよぎっています。