最近のこのブログでは、景気指標を今までより丁寧に見ることにしています。
アメリカの景気を確認することはもちろんですが、インフレが続く兆候が見られているかどうかを確認するためです。
6月になってから新たに発表された米製造業の景気、雇用統計と経済指標を記事で触れてきましたが、いずれもインフレが進みやすくなっている傾向が見られています。
ISMという団体が先週に発表した米サービス業の景気の数字を遅ればせながら確認したのですが、ここでもインフレが強まりそうな傾向が見られているので、この記事で触れたいと思います。
この記事のポイント
- 2021年5月の米サービス業の景気指数は過去最高を記録した。全18業種全てが力強い景気拡大を示した。
- 景気が力強い一方で、インフレが進みやすい状況も続いている。雇用は伸びず提供できるサービスの量が限られてしまうのに、需要は強く値上げしやすい環境。また、仕入れ価格も高い状態も続いている。
過去最高の景気指数を記録した米サービス業
2021年5月のアメリカのサービス業はかなり好調だったようで、景気指数は過去最高を更新しました。
実は2ヶ月前の3月にも過去最高を記録して、コロナ後の景気回復が始まったという記事を書いたばかりだったのですが、それから2ヶ月して再度記録を塗り替える好調を見せています。
>>【関連記事】アメリカの好景気が始まった兆し。米サービス業、3月の景況指数が過去最高を記録。
アメリカではワクチンの効果もあってウイルスの感染拡大をかなり抑え込んで、本格的な景気回復が続いているようで、特に航空・ホテル・レストランなど多くのサービスに需要に回復が見られて好調を記録したようです。
インフレが進みやすい環境はなおも続く
景気が強くなることは良いことですが、冒頭でもお話したように物価が上昇しやすい状態が続いていることは、やはり気がかりです。
今回のISMのサービス業のレポートを見ても、他の経済指標と同じように「需要は強いのに供給力が足りずに、価格が上昇しやすい状態続いている」という傾向が見られました。
新規注文の強さを見ても、前月よりもわずかに上昇してかなり高水準にあります。まだ需要は強いと見て良さそうです。

しかし、雇用はそれほど伸びていません。
50を超えているので前月よりも雇用は拡大していることを示しているのですが、前月よりも数値は下がっているので、雇用の拡大スピードは減少しているようです。

雇用が伸びなければ、サービス提供できる量も伸びません。5月のサービス業の受注残の指数は過去最高を記録しています。

需要が伸びているのに、供給できる能力が限られていれば、必然的に価格が引き上げられてインフレは今後さらに上昇する恐れがあります。
加えて、物流の遅延は前月よりも上昇して悪化しているので、商売に必要な物資をタイムリーに仕入れることが出来てない様子が見えてきます。

そのせいか既に仕入れ価格はずっと高い状態が続いていて、5月のサービス業の仕入れ価格指数は過去2番目に高い水準になっています。

需要が強いうちは、企業は上昇する仕入れ価格に対処するためにサービスの価格を値上げをするはずです。
まとめ
長々と書きましたが、一言でいうと米サービス業は「景気は良いが、しばらくはさらなるインフレを招きそうな環境が続いている」と言えます。
最近発表された景気指標は、どれも同じようなインフレ傾向をデータが示しているように感じます。
私はインフレでもある程度リターンが得られる投資を一部していますが、もしも経済指標を見て投資を判断するなら、「インフレを見越した投資はまだしばらく続けられる」となりそうです。
2021年から顔を覗かせるインフレ、それを見越した投資方法
2021年はウイルスが収束に向かうにつれて景気も上がるはずですが、消費も活発化してあらゆるモノの値段(インフレ率)も上昇するだろうと思っています。2021年はモノ(コモディティ)に投資してもそこそこ上手くいくのではないかと考えています。
ただ、経済指標を見ながら投資を判断するこのアプローチは欠点もあります。
データは過去のものが発表されるのに対して、株価は将来の予想を敏感に価格に反映していく傾向があるので、インフレが落ち着いたことを経済指標が示したときには、インフレに強い銘柄の株価は既にピークをつけて下がっているはずです。
また、中央銀行FRBが景気の引き締め(金融緩和の縮小や利上げ)に動けばインフレを抑える効果が働くので、景気指標だけ見て投資を見ていると足元をすくわれてしまいます。
数日前の記事でも書きましたが、いつインフレを見越した投資を手仕舞うかは、もう少し考えないと行けなそうです。
とりあえずは景気指標とFRBの監視を続けていますが、まだどちらからもインフレ狙いの投資を手仕舞うタイミングは来ていないと現段階では思っています。