ISMからは製造業に引き続き、サービス業のデータも公開されているので、この記事で紹介したいと思います。
さて、今月発表されたアメリカのサービス業の景気は割と良かったです。ただし、最高値を記録した前月に比べるとやや景気の拡大ペースは落ちたように思います。
ビジネス活動や受注が減っていることから、おそらく景気拡大の鈍化の原因は前月から懸念していた新型コロナウイルスの影響を受けていると思われます。
2021年に注目が集まっている物価の上昇については、仕入価格の上昇の勢いが収まっているので短期的なインフレ圧力は弱まっていますが、求人をかけても人が採用できない状況が続いているようで賃金上昇が見られるなら長期的なインフレ圧力はむしろ強まっているようにも見えます。
この記事のポイント
- 2021年8月のサービス業は、前月に引き続きかなり強かった。しかし、コロナの影響を受けて前月から景気の勢いは弱っている。
- 細かく数字を見ると、製造業と同じように仕入れ価格が下がっている。(短期のインフレ懸念の減少)
- また、雇用についても製造業と同じように弱かった。相変わらず人手不足でサービスの提供量、人件費の増加が懸念される。(長期でインフレ懸念増加)
ISMの数字を見る意味
「ISMのデータを見て何になるんだ?結果が公表だれても、株価が大きく動いたことはほとんどないのでは?」と指摘する投資家もいると思います。
もしも短期的な投資家なら、その指摘もそこそこあっていると思います。
私もISMが発表するデータは短期目線ではなく、何年もかけて変化するアメリカの景気の移り変わりを捉えるくらいにしか使っていません。
ただし、中長期投資家には「景気の移り変わりを捉える」ことは重要になってくるので、見る価値はあると思ってい毎月のデータを見ています。
景気の波と株価の動きを眺める【ISM製造業指数の活用の仕方】
このブログでは毎月1日に発表されるISM製造業指数という数字を追いかけています。昨日の記事でも、2021年8月のISMの数字を詳しく見ていきましたが、そもそもこの数字を投資家が見る意味は何でしょうか。
好景気が続いているが、景気の弱まりも感じた8月の米サービス業
ISMは毎月、企業に景気に関するアンケートを行って、結果を数字にして発表しています。
結果が50を超えていれば「景気の拡大」を意味しますが、2021年8月のアメリカのサービス業の景気も前月と同じように大きく50を超えて、好調が続いている様子が見られました。
- 予想:61.6
- 結果:61.7(前回:64.1)
最近ではアメリカの景気拡大が既に勢いを失っていることを示すデータが多い中で、アメリカのサービス業の景況指数は先月まで最高値を更新するなど好調が続いていました。
>>再び最高値を更新した米サービス業の景況感【21年7月ISM非製造業指数】
しかし、2021年8月は新型コロナウイルスの感染拡大が続いた影響もあったのか、さすがに最高値を記録した7月よりも景気の勢いは落ちています。
感染拡大による需要の減少
サービス業の景気拡大ペースが落ちた原因ですが、やはり前月から警戒していた通り、8月にアメリカで新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けているようです。
新型コロナウイルスの流行で人々がサービスの消費を控えるようになったためか、8月は需要の強さを現す受注残が低下しています。
その結果、ビジネス活動は前月67%から7%近くもダウンしています。
インフレ圧力は短期的にはやや後退
ISMからのコメントを見ていると、相変わらずサービス業の企業は人手不足やサプライチェーンの乱れ(物流の遅れで必要な物資が確保できない)状況に苦しんでいるようです。
ただし、このところ上昇が著しかった仕入価格の上昇ペースは緩やかになってきたようです。
仕入価格指数は高い状態は続いていますが、3月以来の水準にまで落ち着いています。これを見る限り、短期的なインフレ圧力はやはり和らいでいるようです。
一方で、気になるのは比較的好調なサービス業の景気に対して、伸びがかなり鈍い雇用です。
業績は良いのに求人をかけても人が十分に採用できていないので、人件費が上昇が続きそうな気配はまだまだ強いです。
先ほど仕入価格の話で短期的にはインフレ圧力が弱まっているという話をしましたが、人件費など一度上がると簡単に下がらない長期のインフレ圧力はまだ健在なようです。