ここでは、ISMから発表があった5月のアメリカのサービス業の景気を見ていきます。
前月までとは違って、ハッキリ大きな鈍化の傾向が見られています。
アメリカの景気後退は予想よりもズルズルと時期が延びていますが、それでも景気が弱くなっていることに変わりはないようです。
この記事のポイント
- 2023年5月のアメリカのサービス業の景気指数は前月から横ばいで、ほとんど成長していないことがわかった。
- 受注は鈍化して、在庫は積み上がっている。これはまだまだ復調の兆しが見えず、景気の鈍化や悪化が続くことを意味する。
- アメリカの経済はサービス業によって支えられてきたが、サービス業にも景気悪化が近づいてきた。
良くなかった5月の米サービス業
5月のISM非製造業指数(サービス業の景気の強さを数値化したもの)ですが、予想よりも悪かったです。
- 予想:52.5
- 結果:50.3(前回51.9)
この数字は50を超えるとサービス業が経済が経済が拡大しており、反対に50を下回ると経済が縮小していることを示します。
今月のISMのサービス業の数字はほぼ50で、前月からほとんど成長していないことがわかりました。
言い方を変えれば、アメリカのサービス業はギリギリ景気悪化をまぬがれたような弱い状態だったようです。
サービス業もまもなく景気悪化へ
景気には波があるので、5月がたまたま不調だったことも考えられます。
しかし、その考えは次のグラフを見れば打ち消せます。
上の図はこの数年のISM非製造業指数をグラフ化したものですが、数年かけてサービス業の景気が鈍化していることが確認できます。
これは5月にたまたま不調だったわけではなく、数年におよぶアメリカの景気鈍化の結果、景気悪化水準にギリギリまで近づいたと見たほうが自然です。
また、5月を底にこれから回復する予兆がないかも見てみましたが、その兆候もまだ見られませんでした。
サービス業の新規受注の伸びは鈍化して受注残が大幅に悪化している一方で、在庫は積み上がってます(下表)。
在庫をなんとかしないかぎり新規受注が増えていく姿は想像しづらいので、まだしばらく受注の回復は先だと思われます。
4月 | 5月 | 変化 | |
---|---|---|---|
新規受注 | 56.1 | 52.9 | -3.2 |
受注残 | 49.7 | 40.9 | -8.8 |
在庫 | 47.2 | 58.3 | +11.1 |
ここまで見ると、どうも5月のアメリカのサービス業の低迷は一時的はではなく、しかもまだこれからも復調の兆しがないことから、今後数ヶ月のうちに景気悪化に転落する恐れもあることがわかります。
カンファレンスボードの予想
ここで、先日のブログに書いたカンファレンスボードの予想を振り返ってみましょう。
これは重要なことなのだが、アメリカの景気先行指数は引き続き今年の景気後退を警告し続けている。カンファレンスボードは第二四半期(4-6月)から経済活動の縮小が始まり、2023年半ばには緩やかな景気後退に陥ると予想している。
カンファレンスボードはまず6月にも経済活動の縮小が始まると言っていましたが、企業の景気だけ見ていると確かにそのような気配もしてきました。
(一方で、雇用はまだ強いので、景気後退にはまだ何ヶ月も時間がかかりそうだと私は思っています)
ISMの発表によれば、5月の製造業は既に景気悪化を続けており、サービス業もギリギリの状態です。
今までのアメリカは製造業は低迷が続いている一方で、サービス業は好調を維持してきましたが、この傾向に変化の兆しが見えるようなISMサービス業だったと思います。