2021年6月もアメリカの景気は強かったことは、先に発表されたいくつかのデータで既に確認しました。
新しい月に変わって、米製造業の景気の強さを測る重要なデータがISMから発表されましたが、こちらを見てもやはり6月の景気は強かったです。
ただ、ISMのデータを見る限りはアメリカの景気は3月にピークをつけたように見えます。そして、インフレが進みやすい状況はまだ続いている点は注意が必要です。
この記事のポイント
- 2021年6月もアメリカの景気は良かった。しかし、景気拡大のペースは3月でピークをつけた可能性がある。
- インフレはまだしばらく上昇する余地がある。企業の仕入れ価格が上昇していて、需要があるのに雇用が伸びずに賃金上昇が進みやすい環境が続いている。
6月も景気は強かったが、ピークを過ぎた可能性
50を上回ると前月よりも景気が拡大していると言われるISM製造業指数ですが、今月も50どこか60を超えて、景気は力強く拡大していることが示されました。
2021年6月ISM製造業指数
- 結果:60.6(前月:61.2)
- 予想:60.9
今回の数字で気になるのは、アメリカの製造業の景気は3月でピークをつけたようにもみえることです。
2020年2月の不況時からのISMの数字の変化を追いかけていくと、2021年3月がピークになっています。4月以降も高い水準を保ってはいますが、緩やかに数字が下がっている傾向が見られます。
1-3月期のVisaの決算資料を見る限り、3月がアメリカの景気のピークになるかも知れないと早い時期から書いてきましたが、ここまではそのとおりの展開になっています。
また、単月では3月がピークでも、四半期ごとに見ると4-6月期が景気のピークだという話もよく聞きますが、今回のISMの数字を見てもそれほど間違っていない気がします。
今後は、アメリカの景気がピークを超えたことを意識しながら投資をしたいと思います。
>>景気サイクルごとにどの業界株が強いかを調べるサイト【ビジネスサイクル・アップデート】
インフレが進みやすい環境は続いている
景気は既にピークを超えたようですが、インフレのピークが過ぎたかどうかはまだ判断がつきません。
ISMのデータを見ている限りは、まだインフレ率が高まりやすい環境は続いているように見えます。
6月の米製造業で仕入れ価格の上昇を訴える企業の割合は、オイルショック後があった1970年代以来の42年ぶりの高水準を記録しています。
その背景になっているのは、製品への強い需要と弱い供給力です。
需要についてはピークは過ぎたものの、依然としてかなりの高水準をキープしています。新規受注は高水準をキープしていて、なおかつ顧客の在庫もまだまだ少ないので今後も強い需要が見込めそうです。
そして、好調な需要に対して、人材を募集してもなかなか採用ができていないことから、賃金上昇が起こりやすい環境は未だに続いています。
今の市場は「2021年のアメリカのインフレは一時的だ」と見ているようですが、私はまだ市場ほど楽観視できていません。
航空機チケットやホテルの宿泊代の高騰など確かに一時的な要因もみられるので、夏をすぎて秋に向かえばインフレ率はピークをつけと思いますが、ひょっとすると新型コロナの前のインフレ率よりもずっと高いインフレ率で落ち着く可能性もあります。
この場合に困るのは、「(1)インフレを嫌がって長期の米国債が売られて、国債が売られると価格が崩れやすい割高な株が下がること」、または「(2)インフレを警戒したFRBが早めに金融緩和を終わらせて、金融緩和頼みで株高になっていた米国株全体が低調になること」です。
毎月発表される消費者物価(インフレ率)などのデータももちろんですが、この記事で見たようにインフレが進みやすい環境が続いているかどうかも、引き続き注意してみていきたいと思います。
まだ米国株には投資できるとは思っていますが、不安要素もそれなりに多い状況が続きます。