8月になって、ISMから7月のアメリカ製造業の景気が発表されたので、見ていきたいと思います。
製造業が支払っている価格が急低下するなど、長らく続いたインフレ圧力に弱まりが確認できる変化もあったようです。
この記事のポイント
- 7月のISM製造業指数は予想を上回ったが、景気の強さは2年ぶりの低水準を示している。
- 良かった点は、価格指数が急低下してインフレ圧力が下がっていることが確認できた点。
- 悪かった点は、新規受注が前月から悪化していること。また、在庫は1984年以来の水準に積み上がり、モノが売れていない恐れがある点。
景気の強さは2年ぶりの低水準に
7月のISM製造業指数(製造業へのアンケートから算出した景気の強さ)が発表されました。
7月の製造業の景気はわずかに予想を上回る結果になりました。
- 予想:52.2
- 結果:52.8
この数字は、50を超えていてば景気拡大を意味します。なので、今月の52.8は弱いながらも景気拡大が続いていると見て良さそうです。
しかし、この数字を毎月追っている人から見ると、だいぶ勢いは弱まったと感じます。記録をさかのぼって見ると、今月(52.8)は2年ぶりの低水準となっています。
実はこのISM製造業指数は、米国株指数のS&P500の値動きと弱いつながりがあるのですが、景気指数を見る限りはまだS&P500の確固たる底打ちは確認できません。
また、後で話をする新規受注の低迷や在庫の積み上がり方を見ると、先行きに不安材料がありそうです。
ISM製造業指数の内訳
ISMが発表するレポートには、先程の確認した数字(総合指数の52.8)だけではなく内訳も見れるので、さっと確認していきます。
インフレ圧力の大きな低下
7月のISM製造業指数のレポートには良かった点と悪かった点があるのですが、まずは良かった点としてはインフレ圧力が大きく下がっている点です。
2021年から製造業が材料などのに支払う価格の指数は高水準を保っていましたが、今月に入って急低下しています。
6月や7月にかけてエネルギーや素材の先物価格も大きく下落したように、原材料価格も落ちているようです。
となれば、アメリカの消費者物価の伸びも少しは鈍化してくるのかも知れません。
製造業以外にもインフレの要因はあるので、すぐにアメリカの物価は2%をめがけて下落するわけではないですが(アメリカの物価は高止まりして2%には何年かかっても戻らないと私は思っていますが)、ISMの価格指数はインフレ圧力低下の一つの良い兆候になりそうです。
新規受注の低迷と在庫の積み上がり
一方で、悪い点としては、どうもアメリカの景気が悪い方向に進んでいるように見えることです。
まず新規受注が前月よりも悪化しています。50を下回っているので、景気拡大スピードが減速しているのではなく、前月よりも悪化したという結果が出ています。
もう一つの悪い点は、在庫が1984年以来の高い水準に積み上がっていることです。
供給不安への対応で在庫を増やしているのかも知れませんが、新規の受注も減っていることをあわせて考えると「売れてないから在庫もたまっているのではないか」と考えてしまいます。
まとめると、価格の伸びが落ち着いてインフレ圧力が低下しているのは良かったのですが、受注も減って在庫も積み上がってるので景気が悪くなっている兆候も見られた7月のISM製造業となりました。