9月になり、前月8月ののアメリカの製造業の景気に関するデータがISMから公開されたので、この記事で触れておきます。
8月の製造業は新型コロナウイルスの感染再拡大があったのにもかかわらず、予想に反して前月よりも景況感が強まったようです。
この記事のポイント
- 新型コロナウイルスの感染再拡大にも関わらず、2021年8月の製造業の景気は前月よりもわずかに強まった。
- 製造業は強い景気が続くと見ているのか、在庫を増やしている。しかし、顧客在庫も増えているので、少しずつ強い景気は終わりに向かい始めている。
- 気になるのは、雇用。前月に引き続き8月の製造業は離職率が高かった模様。高い賃金をもとめて離職する動きがあり、賃金上昇(長期のインフレ)圧力がかかっている。
予想外に上昇した製造業の景況感
ISMから毎月発表される数字に、米国の製造業の景気の強さを表す「ISM製造業景気指数」というものがあります。
毎月の経済のデータの中でもかなり早くに発表されるため、「景気の強さ(景況感)」をいち早く占うために参考にされることが多いデータです。
8月はアメリカで新型コロナウイルスの再流行も見られたため、8月の製造業の景況感は前月よりも悪くなるかと思われたのですが、意外にも前月よりも良い結果が出ました。
- 予想 58.5
- 結果 59.9(前回 59.5)
50を超えてれば景気は拡大していることを意味するのですが、今月も50を大きく超える59.9でした。
以下は、2021年2月以降にISMから発表された製造業の景況指数をグラフ化したものですが、2021年3月をピークに景況感は下がっているものの、まだ米国の製造業は好調なようです。
景気の好調が続くとみるアメリカ製造業
もう少しだけ細かく数字を見ていくと、アメリカの製造業は「今後も強い景気がしばらく続く」と思っているのかもしれません。
これは、8月は製造業の在庫の積み増しが見られたことからわかります。
以下はアメリカ製造業の在庫指数ですが、前月まで50を下回っていた在庫が8月は50を超えて増加に転じています。
在庫を増やし始めているところを見ると、製造業は今後も注文が来るはず(まだ好景気がしばらく続く)と思っているようです。
しかし、一方で前月まで極めて少なかった顧客の在庫のほうにも増加が見られます。
もしも、このまま何ヶ月も顧客の在庫が少しずつ回復していけば、今までの数ヶ月のような製造業への旺盛な注文も一段落することが予想されます。
なので、8月のような傾向が続くなら、強い景気も少しずつ平常時に戻っていくのだろうと思います。
インフレ圧力は前月に引き続きやや減少
2021年に高止まりが続いてインフレを押し上げる要因の一つにもなっていた原材料などの仕入れ価格ですが、前月に引き続き上昇の勢いは弱まっています。
仕入れ価格を大きく押し上げる要因になっていたのは材料・部品の入荷遅延ですが、こちらも改善の傾向が見られています。
まだまだ入荷遅延と仕入れ価格の高騰に悩む製造業は多く、インフレ(生産者物価)は上昇しそうですが、その勢いは緩やかになる兆候が見られています。
心配なのは雇用
最後に少し心配な雇用の話にも触れておきます。
8月の製造業は雇用に問題を抱えているのか、雇用に関する景気アンケートは節目の50を下回って低調でした。
雇用の何に問題を抱えているのかを知るためにISMのレポートを読んでみると、かなり情報量が少ないものの次の2点が書かれていました。
- 求人をかけても、人が決まらない状況は依然として続いている。
- 前月に引き続き、8月の製造業は離職率が高かった模様。
求人をかけても人が来ないのはかなり前から聞いていますが、前月くらいから離職率が高くなっているという話も見聞きするようになってきました。
労働者がより魅力的な職場に移る動きが見られているようで、これが継続するなら賃金に上昇圧力(長期的なインフレ圧力)がかかることになります。
先ほども見たように新型コロナによる入荷の混乱はわずかに和らいで仕入れ価格は減少しているので、一時的に高まっていたインフレ率も和らぐ兆候が見られますが、長期的なインフレに繋がりかねない賃金上昇圧力も見られているのは少し心配です。