12月1日に発表されたアメリカの経済指標の中で気になったものがいくつかありました。
具体的には「強い個人消費(10月)」、「予想より低かったPCEデフレータ(10月)」、「アメリカ製造業の景気悪化(11月)」、「レイオフの増加(11月)」なのですが、10月の内容は米国株投資家にとって都合が良く、一方で11月の内容は都合が悪いものが並んでいる印象です。
この中でも、内容が濃そうな11月のアメリカの製造業の景気悪化について書いていきたいと思います。
この記事のポイント
- 11月のISM製造業の景況指数は50を下回り、ついに「悪化」を示し始めた。
- ISM製造業指数が50を下回ると、企業の利益成長が前年比マイナスに転じる傾向があり、既にアナリストも10-12月期のS&P500の一株利益は前年を下回ると予想し初めている。
- 景気先行指数を見ても、まだ景気改善が見られないことから、景況感も一株利益もまだしばらく低下する恐れがある。
ISM製造業指数は景気悪化を示す
アメリカの製造業の景気の強さを表すISM製造業指数の11月の結果が発表されたので、数字を確認していきます。
- 予想:49.7
- 結果:49.0(前回:50.2)
この数字は50を下回ると製造業の景気は悪化していることを示し、さらに48.7を下回るとアメリカ経済全体で景気が悪化していることを意味します。
今月は49.0で、2020年5月のパンデミック初期以降はじめて50を下回って製造業の景況感悪化が確認されました。
ISM製造業指数と株価
「製造業指数」という名前からすると、製造業の株を持っていない人にとっては一見すると関係がないようにも見えます。
しかし、企業が景気が悪いと判断している背景には、利益が悪化している場合が多いです。過去のISM製造業指数が50を下回っている場合には、S&P500の利益も前年を下回る傾向があります。
一株利益が下がれば、株価は下落する方向に力が働くので注意が必要です。
そして、最近のアナリストたちも22年第4四半期(10-12月期)からS&P500の一株利益は前年を下回る期間が始まると見ているようです。
期間 | 直近4四半期の一株利益 | 前年比 |
---|---|---|
22年2Q | $192 | +21% |
22年3Q | $187 | +7% |
22年4Q(予想) | $181 | -8% |
23年1Q(予想) | $184 | -7% |
22年2Q(予想) | $192 | 0% |
ちなみに上の表を見ると、S&P500の一株利益の成長率の悪化は10-12月期が底で2023年の年明けから改善に向かうように見えます。
しかし、別のデータでアメリカの景気の先行きを見てみると、あまり明るい話題は出てきません。
例えば、カンファレンスボードが発表している景気先行指数を見てみても、7ヶ月連続でマイナスを記録してもまだ底が見えていません。
現時点では、アナリストによる2023年のS&P500の一株利益の低下の予想がまだ甘いように見えるので、年が開けて2023年になってもしばらくは引き続き一株利益と株価の下落を警戒しようと思います。