最近は毎日決算を追いかけていましたが、その間にも1月のアメリカの景気に関するデータが発表されていたので、遅ればせながら振り返っていきます。
今回の記事では、1月の製造業の景気(ISM製造業指数)を見ていきます。
1月の製造業のデータは思っていたほど悪くありませんでした。もっと悪いデータが来てもおかしくないと思っていたのですが、持ちこたえている印象があります。
景気の鈍化は2010年代後半にも見られましたが、そういえばこうした動きは思っている以上にゆっくりと時間をかけて進むので、景気の浮き沈みを見るときには焦らずに見ていく必要があることを思い出しました。
この記事のポイント
- 1月のアメリカの製造業の景気指数(ISM製造業指数)は予想よりも良かった。ただ、2021年に強かった景気の勢いはゆっくりと鈍化している。
- 新規受注・生産・受注残などの需要の強さを表す数字に景気の鈍化傾向が見られる。一方で、仕入れ価格はまだ高い状態が続いていてインフレ圧力はまだ存在する。
2022年1月のアメリカ製造業はまだ景気拡大中
毎月ISMはアメリカの製造業に景気アンケートを取って、景気の強さを景気指数として発表しています。
22年1月のアメリカの製造業の景気指数ですが、予想をよりも良い結果が出たようです。
- 予想:57.5
- 結果:57.6
この数字は50を超えていれば景気拡大を意味するので、今回の結果の57.6は今のアメリカの景気は悪くないということを示しています。
2020年後半からの数字を追ってみると、2021年が異常なほど好景気だったので、それに比べれば景気拡大の勢いはだいぶ衰えました。
しかし、相対的には2021年に比べれば景気拡大は鈍化したものの、景気指数は50を十分に超えているのでまだまだ景気は絶対的には順調な範囲にあると言えそうです。
思ったよりも悪くなかった景況指数
今回の1月のISM製造業指数ですが、50は下回ることはなくても、もっと悪い数字が出ると私は思っていました。
ISMと同じように企業の景気アンケートを取っているIHSマークイットの調査では、22年1月に景気が急激に鈍化している様子が見られていたからです。
以下の図は、マークイットが発表している(製造業・サービス業ともに含む)アメリカ企業のデータをグラフ化したものですが、22年1月に景気が急減速している様子が見られます。
>>【関連記事】1月のアメリカ企業、景気拡大ペースが大きく鈍化した模様。
なので、IHSマークイットの調査結果と似たような数字になるのなら、ISMも大きく悪化するのだろうと少し覚悟していました。
調査した時期による違いなのか、調査対象の企業による違いなのかはわかりませんが、ISMのほうが投資家に重要視される傾向があるので、ひとまず予想された数字ほど悪い結果ではなくてよかったです。
需要は減り、インフレ圧力はまだ力強く残る
せっかくなので、2022年1月のISMのレポートをもう少しだけ詳しく眺めてみると、最近のアメリカの製造業には次の変化が起こっていることがわかります。
- 製造業への需要が衰えている傾向が見られる。
- インフレ圧力は和らいでいるものの、まだかなり高い。
まず、1つ目の需要の変化についてですが、最近数ヶ月はゆっくりと製造業への需要が衰えている印象があります。
以下の図は、新規受注の強さをグラフ化したものですが、ゆっくりと伸びが鈍化している傾向にあります。
「新規受注」だけではなく、同じような傾向は「生産」や「受注残」にも見られていて、やはり2021年からゆっくりと需要の伸びが鈍化している様子が見られます。
しかし一方で、インフレ圧力はまだそれほど弱まってはいません。
2021年のアメリカのインフレの原因の一つとされた、物資の供給の混乱(下図のグラフ)については一時期ほどではなくなりましたが、まだまだ60を超えて高い数字を記録しています。
また、製造業が原材料などで支払っている価格(下図グラフ)も、まだまだ高い水準が続いています。
これらを見ていると、2021年に比べて需要もインフレ圧力も確かに勢いを失っているけれでも、インフレ圧力はまだまだ根強いと言えそうです。
さて、2月10日には1月のアメリカの消費者物価の発表を控えています。
今のアメリカは2021年ほどのインフレ圧力はないので、そろそろ1月か2月のデータで前年比7.1%か7.2%程度でピークをつけて下がり始めると思っているのですが、ISMなどのデータを見ているとインフレ率が下がるペースはゆっくりになるだろうとも思います。