アメリカ製造業の景気の強さ(ISM製造業指数)が今月も発表されているので、中身を確認していきたいと思います。
この発表があった日は、12月のFOMC議事録の公開が控えていたためか、ISM製造業指数の結果はそれほど話題になっていなかったように感じました。
しかし、結果だけ見れば、真新しい材料がなかった議事録よりも結果が悪いISMのほうが内容があったと思います。
この記事のポイント
- アメリカの12月の製造業の景気指数は、製造業の景気悪化をしめす50を下回っただけではなく、アメリカ経済全体の景気悪を示し始めた。
- ISM製造業指数が悪化すればS&P500の企業利益も下がることが多いが、今回もその傾向が見られる。企業利益が悪化すれば株価は下がる。
- 新規受注が上昇に転じていない考えると、まだ今後もISM製造業指数は悪化する可能性が高い。
景気悪化を示すISM製造業指数
12月のISM製造業指数ですが、事前の予想も前回の数字もどちらも下回る結果になりました。
- 予想:48.6
- 結果:48.4(前回:49.0)
この数字は50を下回ると製造業の景気悪化を意味します、48.7を下回るとアメリカ経済全体の景気悪化も示唆すると言われています。
特徴的なのは、このグラフがずっと右肩下がりで下げ止まっていないことです。2021年上半期から低下をはじめたISM製造業指数はずっと低下を続けています。
先月製造業の景気悪化を示す50を下回ったばかりでしたが、今月はついにアメリカ全体の景気悪化を示唆する48.7をも割り込んだかたちになっています。
新規受注
右肩下がりのISM製造業指数ですが、まだ改善の兆しは見えていないようです。
例えば、下の新規受注のグラフを見てみてみると、こちらも下げ止まらずに低下が続いています。
この新規受注のデータが上昇に安定して上昇に転じるまでは、アメリカ製造業の低下傾向は続くと思われます。
企業利益
もしも、不調が「製造業の景況感」だけにとどまるなら、それほど心配は入りません。
でも、ほとんどの場合で、製造業の景況感の悪化の背景には「製造業だけにとどまらない幅広い企業の利益低迷」が絡んでいることが多いです。
そして、今回もISM製造業の景況指数と連動して、S&P500の一株利益が急速に悪化しています。
今回のアメリカの景気は消費者のバランスシートが健全で雇用も強いので、深い景気後退にはならないという意見をよく聞きます。
しかし、去年から原材料は値上がりをつづけ、高い人件費も払い続けた企業に利益を確保する力は残っていないように見えます。
2022年の株価下落の主な原因は金利上昇によるものでしたが、これからの金融引き締めは企業利益の悪化を伴った株価下落に変わっていくと思われます。