2020年に米国株を動かしていたのは景気を支える金融政策でした。
しかし、2021年からはその金融政策がいつまで続くかは景気を見て判断するので、これからはアメリカの景気に少し敏感になっていきたいと思います。
この記事では、アメリカの製造業の景気を知るために、ISM製造業指数という数字を見ていきます。
4月1日に発表された最近のアメリカ製造業の数字を確認すると、やはりインフレ率の上昇を予感させるような内容になっていました。
この記事のポイント
- 米製造業の3月の景気はかなり力強かった。ISM製造業指数は37年ぶりの高水準になった。
- ISMのレポートからはインフレが進行しやすい環境が垣間見える。ほとんどの企業で原材料の価格上昇が見られる他、顧客の在庫は減って受注を多く獲得している様子が見られるので、価格上昇が起きやすくなっている。
経済本格再開前でも、力強い米製造業の景気
多くの人は、アメリカの製造業の景気を知るためにISM製造業指数を参考にしています。
この数字はISMがアメリカの企業の購買担当に毎月アンケート調査を行って集計しているものです。
50を上回っていれば景気が拡大していることを示すのですが、4月1日に発表された3月分のISM製造業指数は64.7で予想以上の好調ぶりを見せました。
この37年ぶりという数字は、最近よく見る数字です。
37年前の1984年のアメリカはGDP成長率で7%を超える好景気だったのですが、2021年のアメリカのGDPはこの年に次ぐ高い成長率になると見られています。
まだアメリカの経済は消費が本格的に回復していませんが、サービス業よりも対面販売が少なくコロナの影響を受けづらかった製造業には、いち早く37年ぶりの景気の波が来始めているようです。
気になるのはインフレ率の増加
今回ISMのレポートを見ていて、インフレ率が上昇しやすい環境ができている点がかなり気になりました。
気になったデータをいくつか見ていきます。
多くの企業で原材料費が上昇
製造業のかなり多くの企業で原材料・仕入れ価格の上昇が見られます。

調査した18業種全てで、原材料の高騰がみられたとのことです。
多くの企業で受注残が増加
原材料が高くなっていると、製造業の株を持っている人は「コストが増加していないか」と心配するかもしれません。
しかし、今の製造業は作るよりも注文を受ける数のほうが多いのか、受注残が積み上がっている状態です。

これなら原材料費のコストが上昇しても、製品の価格に上乗せしやすい状態になっています。
しかも、顧客の在庫のデータを見てみると、在庫はかなり低水準にあるので、これからまだまだ注文は入りやすい状態だと言えます。

製造業が好調で、原材料費が上昇しても製品に価格を上乗せしやすい状態にあるということは、近い将来にアメリカの消費者が感じる消費者物価も上がりやすくなっていることを意味します。
アメリカの消費者物価はまだ本格的には上昇せず
ここまでアメリカの製造業が好調なこと、さらに原材料費が上昇していても製品価格に上乗せしやすい状況にあるので、いずれ消費者物価が上がる可能性が高いという話をしました。
ただし、アメリカで生活のなかでインフレを実感している人はそれほど多くないと思われます。
実際に消費者物価のデータを見てみると、まだ前年比1.7%程度で目標とする2%にもまだ届いていない状態です。

消費者物価が低迷している大きな要因は、恐らく経済活動がコロナ前の状態にまだ全然戻っていないためです。
個人消費を見てみると、まだコロナ前の2020年2月の水準を回復できていません。

しかし、原材料などの価格が上昇して、製造業も好調なら、経済活動さえ再開されれば消費者物価も上昇するはずです。
ブルームバーグの予測によればニューヨークはあと2ヶ月(21年6月頃)、全米でも4ヶ月(21年8月頃)には、ワクチンの接種率が75%を超えて感染拡大を大きく抑え込むことができると見られています。
問題はこのインフレ率がコロナからの経済回復時に見られる一時的なものなのか、何年も続くものなのかです。
何年も続くようなものならばインフレを見越した投資も取り入れておく必要がありますが、少なくともあと数ヶ月は様子をみてみないといけない気がします。
2021年から顔を覗かせるインフレ、それを見越した投資方法
2021年はウイルスが収束に向かうにつれて景気も上がるはずですが、消費も活発化してあらゆるモノの値段(インフレ率)も上昇するだろうと思っています。2021年はモノ(コモディティ)に投資してもそこそこ上手くいくのではないかと考えています。