2021年4月、アメリカの製造業の景気は相変わらず強いですが、景気の拡大ペースは前月よりも少し低下したようです。
気になるのは、落ち込んだ原因です。
ISMという組織がまとめている製造業へのアンケートのレポートを見てみると、アメリカの製造業は、さばくべき注文が増えているにも関わらず、部品や原料をスムーズに調達できず、十分な生産ができていない様子が見えてきます。
また、原材料や部品への需要が高まっているので、製造業の仕入れ価格はますます上昇しています。この仕入れ価格の上昇は、今後数ヶ月にかけて消費者に届く製品の価格も上昇を招くことになると思います。
やはり、私は今後のアメリカの物価の上昇(インフレ)は、今多くの投資家が想定しているよりも大きなものになる気がしています。
この記事のポイント
- アメリカの製造が感じている景気(景況感)は依然としてかなり強いかったものの、前月3月よりも低下した。
- ただし、製造業で好況だと感じる企業が減ったのは、注文が減っているからではない。注文が積み上がって生産を増やしたいのに、部品や原材料の調達がスムーズに出来ず生産が増やせないことが原因。
- 製造業の仕入れ価格がますます上昇している。製造業が製品にコストを上乗せすれば、今後も消費者の物価が上昇する恐れがある。
- この傾向が続くと思うなら、素材・鉱山・化学株や化学物質の原材料となる原油を採掘するエネルギー株に投資するのも手。
アメリカの製造業は力強い景気拡大も、勢いは前月から減速
ここからはISMが発表している4月のアメリカの製造業指数(製造業の景気の強さ)を見ていきます。
この数字は50を超えていると景気が拡大していることを意味するのですが、今月も50を大幅に超えて景気が引き続き拡大していることが示されました。
しかし、今月の数字は前月よりも少し下がって、景気拡大の勢いが少し失われたもようです。
ISMのレポートからわかること
今月のISMのレポートから私が読み取ったのは、次の5点です。そしてこれら5点の傾向が長く続けば、市場の予想以上にインフレが進む可能性もあると思って、少し警戒しています。
- 部品や原材料を調達がスムーズに出来ず、満足な生産ができていない。
- 現状は在庫を減らしながら、生産量が少ない問題をカバーしている。
- 生産が満足に出来ていないので、雇用増加の勢いも鈍化している。
- あらゆる業界で部品や原材料の需要が高まり、原材料価格が上昇している。
- 製造業全体への需要はあるので、製品価格が引き上げられる可能性が大きい。
まず、4月の米製造業は生産が3月よりもやや減速しました。
項目 | 4月 | 3月 | 変動 |
---|---|---|---|
生産 | 62.5 | 68.1 | -5.6 |
ISMによれば、新型コロナウイルスの影響で部品・原料をスムーズに調達するのが難しい状態が続いて、生産が追いついていないことが原因だと言います。
これは恐らく正しいです。前月から受注残が増えていることから、注文に対して生産が足りていないことがわかります。
項目 | 4月 | 3月 | 変動 |
---|---|---|---|
受注残 | 68.2 | 67.5 | +0.7 |
満足な生産ができなら、雇用を増やす必要がないので、企業の雇用も少し勢いが鈍っています。
(4月の雇用者増加数はエコノミストの予想よりも小さいかも知れない点には注意です)。
項目 | 4月 | 3月 | 変動 |
---|---|---|---|
雇用 | 55.1 | 59.6 | -4.5 |
また、あらゆる業界で仕入れ価格が上昇している点には注意です。
項目 | 4月 | 3月 | 変動 |
---|---|---|---|
仕入価格 | 89.6 | 85.6 | +4.0 |
値上がりしている原材料と値下がりしている原材料を比べても、圧倒的多数で根上している材料が多いです。
今のところ製造業への需要(注文・注文残り)はあるので、製造業は仕入れコストが高くなった分を値上げできる余地はあると思います。
この状況が続くと、アメリカで思わぬ物価の上昇(インフレ)を招きやすい環境にあるのではと思って、私は少し警戒しています。
まとめ
ここまでISMのレポートから、2021年4月のアメリカの製造業の動きを読み解いてきました。
4月は景気の拡大が続いていたものの、材料・部品の調達が滞って、生産や雇用が伸び悩んでいる点が見られました。
また、3月の時点でかなり原材料の価格の上昇が見られていましたが、引き続き価格の上昇は続いているようです。
この流れがまだ続くと考えるなら、原材料となる鉱山・素材・化学株や、数多くの化学物質の原料となる原油を採掘するエネルギー株に投資しておくと良いかも知れません。