アメリカで注目度の高い経済指標の一つに、製造業の役員に景気の感じ方のアンケートをとったISM製造業指数があります。最新の2019年10月の結果はどうだったでしょうか。結果は見たけれど、どう解釈したらいいのかイマイチ分からないという人も多いと思います。
「そもそもISM製造業指数とは何だ」という方は、ISM製造業指数とは何か。なぜ注目されるのか【わかりやすく解説】で詳しく解説していますので、合わせて御覧ください。
この記事では、2019年10月のISM製造業指数の結果を振り返り、そこから読み取れる3つのことについて触れていきます。
- アメリカの製造業は全体的に悪化しているが、前月より悪化する速度がゆっくりになった。
- 製造業のサイクルは今がボトムの可能性がある(米製造業は今後、上向くかも知れない)
- ただし、もっと大きなアメリカ経済全体に不況の波が来る可能性もあるので、楽観は禁物
予想下回る悪化も、前月よりわずかに改善
10月のISM製造業指数の結果は悪かったです。大きく落ち込んだ前月よりかは改善しましたが、エコノミストの予想を下回っています。
- 予想:48.9
- 結果:48.3(前月47.8)
50を下回ると景気の悪化を意味するのですが、この節目の50の数字も3ヶ月連続で割り込みました。
過去2年間のデータをグラフ化してみても、全体的に右肩下がりです。ただし、前月よりも少し良かったことで、これから上向いている可能性がないわけではありません。
株価でも同じことが言えますが、ボトムやピークは過ぎ去った後でないとわからないので、前月の2019年9月が「底」だったかは、もうしばらく様子をみないといけなさそうです。
内訳を見ると輸出は大きく回復
以下は、ISM製造業指数のアンケート項目毎の内訳なのですが、50を下回って低迷する項目がずらりと並ぶんでいます。
ただし、1つだけ異彩を放っているものがあります。輸出です。前月から9ポイントと大幅回復して、ボーダーの50をも超えています。
Index | 2019年10月 | 2019年9月 | 前月比 |
---|---|---|---|
PMI製造業指数 | 48.3 | 47.8 | 0.5 |
新規受注 | 49.1 | 47.3 | 1.8 |
製造 | 46.2 | 47.3 | -1.1 |
雇用 | 47.7 | 46.3 | 1.4 |
入荷遅延 | 49.5 | 51.1 | -1.6 |
在庫 | 48.9 | 46.9 | 2 |
顧客在庫 | 47.8 | 45.5 | 2.3 |
仕入価格 | 45.5 | 49.7 | -4.2 |
受注残 | 44.1 | 45.1 | -1 |
輸出受注 | 50.4 | 41 | 9.4 |
輸入 | 45.3 | 48.1 | -2.8 |
この結果はちょっと意外でした。輸出が好調だった分野は、石油関連製品、木材製品、電化製品、食品・飲料・タバコだったようですが、好調の要因はISMからの名言はありませんでした。
アンケートに回答した製造業のコメントを読んでも、米中の貿易戦争で逆風が吹いている話が多かったので「関税が強化された9月の直後に比べたら、状況は落ち着いた」と思っているだけかも知れません。
米製造業の景気サイクルはまもなく底か
さて、最近私が気になっているのが、もう間もなくアメリカの製造業の景気は底を打つのではないかという憶測です。
先程、ISM製造業指数の直近2年間のグラフを見てみましたが、これをもう少し長期で見てみると、ISM製造業指数の景気のサイクルは1年半から2年ごとに、ピークとボトムを繰り返していることがわかります。
1年半から2年おきに訪れる製造業の景気の反転のサイクル通りに行くならば、もう間もなくアメリカの製造業の景気は底を迎えて、反転して良くなっていく可能性があります。
景気後退と景気再拡大の間で揺れる経済
では、これからアメリカの景気は良くなるのかというと、現時点では判断がかなり難しいです。
製造業の1-2年ほどの短期な周期だけを考えるなら、これから底を打って景気が回復する気がします。ただし、製造業サイクルよりも影響力が大きくサイクルも長い不況の波が来ると、景気は悪化するはずです。
世の中の多くの投資家は、この数ヶ月の間にかなり景気後退に対して、楽観的になった気がしています。中央銀行のFRBは3回も利下げをして景気を支え、米中の貿易戦争も部分的な合意をしようとしています。さらに製造業も最悪期を脱すれば、景気は上向く気配があります。
ただ、私はまだ現時点では、景気拡大にも、景気後退にもどちらにも転がる可能性がある過渡期にいると思っているので、まだ株への追加投資はせず、様子を見守りたいと思います。