新しい月になったので、投資家から注目の高いアメリカ製造業の景気の強さの数字(ISM製造業指数)を確認していきたいと思います。
5月のアメリカの製造業の景気は、予想外に良かったです。私は正直もっと悪い数字を予想していました。
しかし、それでもこの日の米国株はいくらか下げています。後付けにはなってしまいますが、なぜそのような反応をしたのかを考えていきます。
この記事のポイント
- 2022年5月のアメリカの製造業の景気は良く、前月よりもISM景気指数は上昇した。
- しかし、この日の株価は下落した。まだ景気が良いならインフレを抑えるための利上げがまだまだ続くと投資家が警戒した恐れがある。
予想外に良かった5月のアメリカの製造業
ISM製造業の数字は50より大きければ前月よりも景気拡大、50よりも小さければ景気縮小を意味します。
先に結果を発表していたニューヨーク連銀の製造業景気指数では5月は「景気縮小」を意味するデータが発表されていたので、ISM製造業指数の5月分もひょっとすると50を下回る悪いサプライズもありえると私は警戒していました。
>>アメリカ製造業、スタグフレーションの気配がちらつく【22年5月NY連銀製造業】
しかし、結果は楽々と50を超えて、エコノミストの予想も超えるだけでなく、前月よりも良い数字を残しました。
- 予想:54.6
- 結果:56.1(前回55.4を上回る)
私の中ではこれは少し意外な結果でした。
長期的には景気拡大は減速傾向
一方、今回の結果だけではなく2021年からのISM製造業指数の傾向を追ってみると、やはり景気拡大のペースは減速していることは間違いないようです。
以下のグラフは2021年3月をピークにISMの数字は低下している傾向が見られます。
ここまでをまとめると、傾向として景気拡大のペースが鈍化していることは間違いなさそうなのですが、それでも5月は予想外に景気が持ちこたえたと言えそうです。
予想外の景気の強さで株価が下がった理由
しかし、予想以上に景気が良かったからと言って、米国株も上昇というわけにはいきませんでした。
その理由を後付で解釈するなら「まだインフレは収まっていない。景気は良い。それなら、株に悪影響がある利上げがさらにあるのでは」と投資家たちが身構えたのかも知れません。
ISMが発表した5月の(支払い)価格指数を見てみると、まだまだ高い水準にとどまっていることがわかります。
この物価の上昇を抑えるためには、利上げがまだ必要なのかも知れません。
利上げをするデメリットに景気が冷え込んでしまうことがありますが、幸い5月は前月よりも生産も受注も伸びていたようです。
インフレはまだ収まっていなく、景気もまだ耐えているなら、投資家の頭の中にさらなる利上げの可能性が浮かんだとしても不思議ではありません。
さいごに
この記事では、5月のISMの製造業指数を見ていきました。景気の緩やかな拡大減速は続いているものの、現時点では予想ほど景気は弱くない姿も見えてきました。
最近の経済指標の傾向として今後の見通しは悪いのに、現在の景気はまだ予想ほど悪くない良いというのが多く見られますが、今回もまた同じ結果となりました。
本来景気が良いのは良いことなのですが、景気が耐えれば耐えるほど利上げの余地が生まれて株価が下がるのは、投資家にとって悩ましいところです。
この傾向が続けば、2022年に政策金利は3%よりも大きくなるのかも知れません。
一方で、もしも景気が急に悪化していたとわかれば、今度は企業の利益が危ぶまれて株価は下がるはずです。
そうなると、株価が上昇するストーリーは景気の勢いは損なわれずにインフレがスッと消えていくことですが、それは現時点ではまだ期待薄です。