アメリカとヨーロッパで金利に対する考え方が、綺麗にわかれています。
アメリカの中央銀行FRBは日銀の長年の取り組みを振り返り、マイナス金利の効果に疑問を投げかける論文を発表しています。
一方で、ヨーロッパ中央銀行ECBの次期総裁に決まっているラガルド氏は、既に政策金利をゼロに設定している中でも、さらなる利下げも可能だと認識を示しています。
マイナス金利に懐疑的な見方を示すFRB
8月26日、サンフランシスコ連銀は日銀が2016年から導入したマイナス金利政策に関する論文を発表しています。
Negative Interest Rates and Inflation Expectations in Japan(FRB of San Francisco)
この論文の中では、日本のインフレ期待に関するデータを参照しながら、マイナス金利を導入した日銀の狙い通りにインフレ期待は上がらなかっただけでなく、逆に低下したと言います。
もちろん、インフレ期待の低下は景気の悪化などの別の要因が引き起こした可能性も考えられると言いながらも、インフレ期待を低い状態から引き上げる効果がマイナス金利にあるかは疑問だと結論づけています。
この辺りは、日本にいると何となく肌身で感じていることかもしれません。
マイナス金利の深堀りに言及するヨーロッパECB
アメリカFRBがマイナス金利に一定の距離をとる一方で、まだまだマイナス金利の効果に期待をしているのはヨーロッパの中央銀行ECBです。
ECBの政策金利はゼロ%、預金金利はすでに過去最低のマイナス0.4%ですが、次期総裁に決まっているラガルド氏はECBにはまだ金利を引き下げる余地があると発言しています。
ラガルドECB次期総裁、見せたハト派の横顔-ドラギ路線踏襲を示唆(ブルームバーグ)
ラガルド氏は、あまりに長期にわたってマイナス金利を維持することは副作用が生じる恐れがあると言いながらも、金利のマイナス幅を広げる可能性を排除しませんでした。
リーマン・ショック以降、先進国の中央銀行は金利引き下げと債権購入(量的緩和)を実施してきましたが、ECBはまだ量的緩和を実施するほど景気が弱くないとの見方が、発言の背景にあるようです。
9月にも何かしらの金融緩和策が実施される見通しのECBですが、オランダの中央銀行総裁はヨーロッパの景気はまだ量的緩和を実施するような段階ではないと慎重な姿勢を見せています。
ECB、QE再開を正当化できるほど景気弱くない-オランダ中銀総裁
つまり、ECBはマイナス金利を積極的に進めたいわけではないのですが、まだ量的緩和を進めるほどの景気の状態ではないので、消去法でマイナス金利を深める方針も検討されているようです。
ECBマリオ・ドラギ総裁の決断はいかに
アメリカの政策金利は2.0-2.5%でまだまだマイナス金利には程遠い状況ですが、一方でヨーロッパは9月にも金利のマイナス幅を広げるか否かの決断が迫っています。
2019年9月にはついに欧州も。世界の中央銀行は続々と緩和策の実施へ。
ECBのマリオ・ドラギ総裁の任期は10月末までですが、9月12日と10月24日のECBの政策決定会合では最後の大仕事が待っています。