最近では、FRBやアメリカ財務省は動きが慌ただしくなっています。
「もう既に金融危機なのかな」と感じるような速さで、銀行の信用不安の対応を次々と打ち出しています。
ただ、市場の投資家がどのような反応を見せているかというと、まだ大きな危機が迫っているような気配はありません。
この記事のポイント
- 市場の投資家は今すでに危機が来ているとは思っていない。
- 銀行株は大きく下落したが、米国株全体では下げは大きくない。また、恐怖指数VIXはまだかなり低い水準にある。
- ジャンク債を売って、より安全性の高い米国債を買う動きもまだ本格化していない。
下落が大きいのは銀行株なの一部だけ
タイトルでも書いたように、銀行をめぐるゴタゴタの中でも市場の投資家はかなり冷静に動いているように見えます。
たしかに、3月に入ってから地方の銀行株などの一部の銘柄は大きく株価を下げています(下図)。
しかし、銀行株以外も幅広くカバーするS&P500の値動きを見てみると、3月に一時的に下げましたがその後すばやく回復しています。
上のグラフを見ていると、どこでシリコンバレーバンクの破綻があったのか日付を見ないとわからない程度でしかありません。
最近の銀行不安の米国株全体への影響は、今のところはほとんどないと見ていいと思います。
また、投資家が警戒心を強めると上昇すると言われる恐怖指数VIXを見ても、過去の危機の時に見られたような急上昇は見られません。
VIXから判断しても、投資家は「(少なくとも今は)危機ではない」と考えているようです。
債券投資家の反応
また、債券市場を見ても同じ結論が出そうです。
不況や危機が訪れた場合には、リスクの高いジャンク債(ハイイールド債)を売って、安全な国債に投資資金を移す動きが見られます。
この動きが起こるとジャンク債の利回りが上がり国債の利回りが下がるので、この2つの利回りの差が急上昇するのですが、今はその急上昇がまだ見られません(下図)。
これを見る限り、債券投資家も「(少なくとも今は)危機でも景気後退でもない」と考えているようです。
ここまで見てきたように、株式投資家も債券投資家もまだ危機が迫っているとは思っていないようです。
これから景気後退になると考える投資家は多いかも知れませんが、もしもこのままアメリカの景気が悪くなるなるとしても、現時点はまだ序盤の入り口にさしかかったかどうかの最初の段階なのだと思います。