アメリカでの新規失業保険の申請数が再び上昇しはじめました。
3月のロックダウン(都市封鎖)後に、過去最大規模で失業者が急増した後、7月上旬までは新規失業者は減ってきていたのですが、新規失業者の減少は止まり、わずかに上昇する動きが見えています。
問題は、新規失業者が高止まりしている点です。新型コロナウイルス前は1週間の失業保険申請は20万人程度でしたが、今や毎週130-140万人もいます。過去の不景気時にでも最大で50万人前後だったのと比べても、失業者はかなり多いです。
一部の投資家は今のアメリカが陥っている状況に備えはじめたかのように、安全資産の国債と金が買われる動きが見られます。
この記事のポイント
- アメリカで失業者申請数が再び増加に転じた。雇用の回復は3ヶ月で止まり、新規失業者数はかなり高止まりしている状況。
- 市場は既に備え始めている。安全資産の米国債やゴールドは上昇している。
- 米国債は買われているが、利回りが予想されるインフレ率を下回っている点には注意。インフレを考慮した実質マイナスのリターンなので、今は長期投資には向いていない。
高止まりしている新規失業者数
7月23日に発表された、アメリカでの新規失業保険申請数は再び増加に転じました。
3月に新型コロナウイルスの影響で失業者は急増し、その後は新規の失業者は減っていたのですが、その減少もついに止まってしまいました。
上の表で、新型コロナウイルス前の2020年2月頃のデータを見てみるとわかるのですが、コロナ前の新規失業者は毎週20万人程度でした。
リーマンショック時の最悪期でも50-60万人程度でしたが、それと比べても今の130-140万人で新規失業者が高止まりしている状況が、いかに異常な状態かわかります。
6月末時点でアメリカの個人の消費はおそらく前年比マイナス10%前後まで回復していましたが、この水準で回復が止まってしまうと企業にとてはかなりの大ダメージになります。
決算シーズン序盤から見えた米消費の傾向。好調なネット消費にもわずかな息切れ
7月中旬から始まった決算シーズンを見る限り、いくつかの傾向が見られている気がします。まだ決算シーズン序盤なので、傾向を一般化するのも早い気がしますが、今見えている傾向をいくつかこのページでまとめておきます。
上昇する国債と金
景気の本格回復にはGDPの7割を占める個人消費の復活が必要ですが、そのためには雇用が回復する必要があります。
市場は2021年に新型コロナ前の経済に戻ると予想していますが、この予想はもっと先にずれ込む可能性が高いと思います。追加の景気刺激策がなければ、市場が景気回復の予想を下方修正する中で、いくらかの株価の調整や、株価上昇が抑えられる期間があるかもしれません。
一部の投資家は、6月上旬からこうしたアメリカの経済の不調を感じ取っていたのか、安全資産の国債や金(ゴールド)を買う動きが加速しています。
以下はアメリカの超長期国債に投資するETF(上場型投資信託)ですが、6月上旬から価格が上昇し続けています。
また、金(ゴールド)ETFの価格も同じく6月上旬から上昇が続いています。
国債は買われているが実質マイナスのリターン
では、今から手持ちの資金で国債や金を買ったほうが良いかですが、これは判断が難しいところです。
金は良いと思います。でも国債は10年米国債の利回りが0.6%しかなく、市場が予想している10年後のインフレ率1.4%よりも低いので、インフレを考慮した実質リターンは0.6%-1.4%=-0.8%で、マイナスのリターンしか生まない資産になっています。
今の国債は短期的には上昇する余地はありますが、実質マイナスのリターンでは何年も保有する資産としては難点があります。
もしも、手持ちに資金がある場合は、金(ゴールド)を購入するか、もしくはしばらく株が下落するのを待って、株を買うのも良いかもしれません。
株は今は企業利益の22.5倍(PER22.5)の価格がつけられて割高ですが、それでもインフレを考慮した長期リターンは1/22.5=4.5%程度の実質の長期リターンが見込めるので、国債よりかは良い投資先です。(※この長期実質リターンの算出はジェレミー・シーゲル教授がよくやる方法です。)
また6月半ば頃から、このブログでは次の2つの理由から「短期的には株が下がる局面がありそう」と言ってきました。加えて、上で書いたようにアメリカの景気回復予想の下方修正で株価の調整が起これば、株は買いやすくなります。
短期的に株が下がりやすい理由
また以下はアノマリーなのであまり参考にならないかもしれませんが、アメリカ株の大手テクノロジー株の比率が高いナスダック100指数は7月20日から9月末までは例年下落しやすい傾向があるようです。
The Nasdaq 100's seasonal peak is…today.
This is a tertiary factor at best. But still a headwind. pic.twitter.com/PrnVhpK4x0
— SentimenTrader (@sentimentrader) July 20, 2020
下落理由の1つ目にあげた新型コロナウイルスの再流行については、最近のアメリカは新規感染者数の増加ペースを抑えるのに成功しているので、短期の株価の下落理由を失いつつありますが、いずれにしろ今は国債よりも株かゴールドを狙っておくスタンスで行こうと思います。