毎週同じ話題をしていて、既にあきている人もいるかも知れませんが、新規失業保険申請件数について書いていきたいと思います。
今週も新規失業保険申請件数が発表になりましたが、やはりアメリカで新規失業者が増えつつあるのを感じます。
失業しても求人が十分になるなら、すぐに職にありつけるので失業率が増えませんが、頼みの求人もとてもゆっくりですが数が減っています。
この記事のポイント
- 新規失業保険申請件数は増加傾向にある。2022年10月から上昇は続いている。
- ただ、すぐに次の職についているのか、失業保険の継続利用者は減っている。恐らく失業率はまだ大きく上昇しない。
- 求人数の減少が続けば2024年第1四半期にも求人数はパンデミック前に戻る。また、新規失業保険申請件数が過去のリセッション突入時の水準にまで上がるのも同じ時期。
上昇がトレンドが続く新規失業保険の申請件数
まずは、6月17日までの1週間の新規失業保険申請件数の数を確認していきたいと思います。
- 予想:25.4万件
- 結果:26.4万件
- 前回:26.2万件から26.4万件へと上方修正
今週の数字は予想を上回って伸びているのですが、私は新規の失業保険申請件数の増加トレンドが続いていることのほうが問題だと思っています。
次の図は過去1年間の新規失業保険申請件数をグラフにしたものです。はっきりと2022年後半から数が増えている傾向が続いています。
失業保険の受給者数は減少
ただ、今月6月の失業率はそれほど上がらないかもしれません。
新規失業保険の申請件数が増えていると言っても、すぐに次の職につければ失業率は悪化しないからです。
幸い今の時期はいつもの景気サイクル終盤よりも求人数が多いのか、失業保険をもらっても比較的すぐにその状況を脱している人も多いようで、失業保険の継続受給者の数は4月をピークに減っています(下図)。
なので、新規失業保険が増えたからと言って、すぐには失業率は悪化しないかもしれません。だから、アメリカの景気後退は今すぐにはやってこないと思います。
一方で求人は緩やかに減少
しかし、求人件数が多い今の状況はいつまで続くのかは、少し気にしても良いかもしれません。
失業者が増えて次の職の職につく人も増えているということは、求人を消費していることを意味します。それなら、かつては多かった求人も減っていきます。
そこでIndeedが発表しているアメリカの求人件数を確認してみます。
次のグラフは2020年のパンデミック以降のアメリカでのIndeedの求人掲載数ですが、多かった求人数の減少続いているようです。
特に2023年に入ってからは求人の減少のペースを早めているので、このままなら2024年第1四半期にも求人数はパンデミック前の水準に戻るかもしれません。
それは悪い話ばかりではなく、その頃には賃金上昇によるインフレの心配もなくなっているはずです。
景気後退は2023年末から2024年第1四半期か
最後にこのまま新規失業保険申請件数がいつ頃に景気後退になるかを、ざっくりとした形で推計したいと思います。
過去の数回のアメリカの景気後退では、だいたい新規失業保険申請件数が35万件を超えると景気後退になっていました(下記事に詳細)。
>>アメリカのリセッション突入の判断基準【新規失業保険申請件数】
そこで、今のペースで新規失業保険申請件数が増えたらいつ35万件を超えるかを今週分のデータを入れて回帰分析をしてみました。
これを見ても2024年第1四半期頃に、過去のリセッション突入時の水準の35万件を超えるようです。
求人件数がパンデミック前に戻る時期も、新規失業保険申請件数が35万件を超える時期も2024年第1四半期と出ましたが、この時期に景気の変化が訪れるのかもしれません。
予想される変化としては、賃金インフレ沈静化とリセッション突入ということになります。
2023年のリセッション突入を予想していた身としては、2024年第1四半期のリセッション突入というデータは少々がっかりですが、これからどんな変化が見られるのかを観察したいと思います。