アメリカの景気後退の時期を占う上で、最重要なのは雇用となりそうです。
その雇用の状況をいち早く知ることができる新規失業保険の申請件数が発表になりました。最新のデータでは 失業者が増えたようなので、内容を見ていきます。
この記事のポイント
- 新規失業保険の申請件数は予想を超えて増加した。やはり2022年10月から失業者は増加している傾向が続いている。
- しかし、依然として失業者の増加ペースは緩やかで、景気後退までは早くても数ヶ月から半年かかるかもしれない。
- 雑な概算では、過去にリセッションに突入した新規失業保険の申請件数35万人に達するまであと10ヶ月弱必要。
予想より悪かった新規失業保険申請件数
6月3日週の新規失業保険の申請件数ですが、予想より悪い(失業者が多い)結果になりました。
- 予想:26.1万件
- 結果:23.5万件
- 前回:23.2万件件からへ23.3万件上方修正
上の数字だけを見ても規模感がつかめないので、グラフで確認してみましょう。
下の図をみると、前回まで低下傾向だった失業保険の新規申請件数が、クイッと上昇したことが確認できます。
まだ、来週以降も様子をみないといけませんが、ずっと失業者保険の申請件数の低下傾向が続いていた2023年5月の流れは止まったかもしれません。
景気後退まだ遠い
失業保険が必要な人が増えたのは確かですが、それだけで「景気後退が近い」と決めるのは早計かもしれません。
過去にアメリカでリセッションに突入した時には、新規失業保険の申請件数はだいたい35万人でしたが、今はまだ26万人です。
リセッション突入時期 | 新規失業保険申請件数 |
---|---|
1990年7月(湾岸戦争) | 36万人 |
2000年3月(ITバブル崩壊) | 37万人 |
2007年12月(世界金融危機) | 34万人 |
現在 | 26万人 |
現時点の26万人から35万人になるまでには早くても数ヶ月から半年はかかる気がしています。
最近は製造だけではなくサービス業の景気も大きく鈍化してきたので、アメリカのリセッションが少しずつ近づいている印象はありますが、依然としてリセッションまでの距離は遠いです。
>>アメリカのサービス業の景気もまもなく悪化へ(2023年6月6日)
シミュレーション
アメリカのリセッションがまだどれくらい遠いのかは、シミュレーションしてみるとより実感するかもしれないのでやってみます。
次のグラフは新規失業保険申請件数が底をうった22年9月末から23年6月3日週までのデータをプロットして、その傾向を分析したものです。
9月末から6月3日までのトレンド(2次の回帰分析)をうすい緑色の線で書いてみましたが、このトレンドラインが35万人を超えるのは2023年4月となっています。
失業の波が本格化したら失業者は急激に増えるはずなので、実際には4月まで待たないでアメリカはリセッションになると思いますが、データの傾向を見ると雇用の悪化はかなりゆっくり進んでいることが実感できると思います。
というわけで、一部のメディアでは新規失業保険申請件数は急増したと書いていますが、アメリカのリセッションまでの距離はまだ遠いと言えそうです。