先月まではアメリカのインフレは下がっているという自信がありましたが、最近になって少し不穏なデータがいくつか出てきています。
少し前までは2023年はインフレはかなり急速に低下するという予想を立てていましたが、実際にはもう少しだだけ粘ってからインフレは低下に向かうのかもしれません。
この記事のポイント
- アメリカの消費者物価は過去数ヶ月に渡って、上方修正された。
- アメリカの雇用は強く、引き続き賃金上昇の圧力は強い状態が続いている。賃金を通じてサービス価格を押し上げる力になる。
- また、2022年後半はモノの価格上昇の鈍化が進んで物価の低下につながったが、1月は中古車でやや大きめな価格上昇が見られるなどの気になる動きもある。
改定されたアメリカの消費者物価
昨晩ですが、季節調整済みのアメリカの消費者物価が改定される動きがありました。
理由は季節調整のための数字を変えたためのようです。(季節調整のための数字は直近過去5年分のデータを使うので、毎年はじめにこのような変更があります)
細かい話はさておき、少し困ったことになっているのが、この改定によって「アメリカのインフレは鈍化している良かった」と言っていた2022年後半の数字が、上方修正されてしまっていることです。
消費者物価(前月比) | 変更前 | 変更後 |
---|---|---|
22年12月 | -0.1% | +0.1% |
22年11月 | +0.1% | +0.2% |
22年10月 | +0.4% | +0.5% |
過去2年間の前月比の伸びを下図で見てみると、2022年後半はインフレが鈍化していることに変わりはないです。
しかし、季節調整済みの前月比を見ながら「今月のインフレ率は低下してる」と楽観を強めていったところに、少しだけハシゴを外された印象はあります。
依然として強い雇用
インフレ低下がすんなり始まらないかもしれないことを示す不穏なデータはまだいくつかあります。
テクノロジー企業だけではなく、流通や運輸などの業界でも人員削減の動きが見られるのですが、新規失業保険申請件数は下がり続けています(下図)。
そろそろ少しくらい失業者が上がっても良いだろうと思っているのですが、求人数は失業数を大きく上回っているところを見ても、失業しても再就職に困らない状況がまだ続いているようにも見えます。
まだ雇用は強いなら賃金の上昇は高いままで、人件費の高騰を補うためにサービス業を中心に価格上昇はまだしばらくは続くのかもしれません。
一部のモノは上昇
最後に触れるのは、一部のモノで(一時的かもしれませんが)価格の上昇が見られることです。
2022年後半からアメリカの消費者物価が落ち着いたのは、(サービスの価格は上がっていても)モノの値段の上昇が収まったからでした。
しかし、最近では一部のモノの価格に上昇している動きが見られます。例えば、以下の記事では1月の中古車の価格が上昇したと伝えています。
突然跳ね上がった米中古車価格、FRBのインフレ鎮圧戦略に誤算か(ブルームバーグ)
最近の記事で何度か書いているように、私は2023年にインフレが大きく鈍化する予想は変えていません。ただ、このような一時的なモノ価格上昇はまだ起こりうるのだろうと思います。
最近のデータを見ていると鈍化に至るまでの道のりは平坦ではなさそうな雰囲気を感じます。